【ヒーロー見参！　大団円！】

　そう。そうなのです。
　ヒーローとは得てして、ちょっぴり遅れてやってくるものなのです。
「…………待たせたな！！」
　会場へ、多くのファンたちの前へ、颯爽と現れるのはもちろん、ご存じ寝子島観光大使！　ゲームの主人公までも務める寝子 サンマさん、びしっと力強くサムズアップ！
　頭に小ネコサンマさん、足には黒猫のクロちゃんががっつりと食いついておりますけれど、気にしない！
「出たにゃ、サンマ！　お前もかぼちゃにしてやるにゃーッ！」
「そうはさせないぜ～。今の俺には、頼りになる仲間がいるんだぜ！」
　壇上にてカボキャットＡと対峙する彼のバックにざざん、と控えておりますのは、サンマさんファミリーズ！　シャケ次郎にマンボウくん、クリオーネ……それだけではありません。
「イベントやってるって聞いて、見に来てみたですよー」
「あら、また会ったわね。ちょっと取り込んでるけど、楽しんでいくといいわ……さあ、守りは私に任せなさいッ！」
　猫屋敷 姫と、ひらひら舞い踊るキンギョさん！
「あーあ、ほっとこうって言ったのに……」
「仕方ないすよ。こいつら、人の話聞きやしねぇし」
　七緒 璃音＆屈強で頼りがいのあるアオザメさん、如月 庚＆l>┼┼(.,,ﾟДﾟ) アジさん、これが正式名称！
「今度こそ、助けに来たぞ！　サンマよッ！」
「ふっ……俺たちの他にも、お節介な連中が多いみたいだぜ……？」
　誰にも慕われるサンマさん、その信頼と絆を示すかのように、続々と登場する仲間たち！
「みんなを助けるデスヨ、カエデ！　ラティ！　いくデスっ！」
「まったく、どうしてこうなった……」
「主人の喜びのために尽くすのが執事たる我々の務めだ、若人よ。それではシーラ様、お力をお貸し願えますでしょうか？」
「ええ、全てあなたに任せるわ。セバスチャン」
　トワ・E・ライトフェロゥ＆ラティメリア・C・シーラの新旧お嬢様コンビに、夜海霧 楓＆セバスチャンことモンク・フィスの、執事？　コンビ！
　真剣を振り回し、興奮した様子ですぱすぱと風船を両断し始めたのは、呪われし妖刀魚。ムラマサンマ！
「ぬふぅ……っ！」
「狙いが反れた？　あの猫を敵と見なしたのか、なら丁度いいぜ！」
　状況を察したサキリ・デイジーカッターも、刃を振るって風船をぱぱぱ、ぱんっ！　と割っていきます。
　極め付けは、この方々！
「サンマ野郎の味方をするのは不本意だが、愛すべき寝子島島民を守るためだ！　行くぜ、南よ！」
「ふ、我に指図するなど、お前くらいのものよ……共に戦おうぞ。黒よ！」
　なんかいつの間にか友情っぽくなってる、黒 マグロさん＆南 マグロさん！　黒さんは別にサンファミのキャラじゃなかったりしますけれど、バッチリ溶け込んでおります。
「にゃ！？　み、ミーの風船を次々に……！？」
「よーしみんな、一気に行くぜ～！」
　慌てて風船をすぽぽぽんと増量するカボキャットＡ、けれど彼らサンマさんファミリーズと、そして観客たちの攻勢は止まらず。ぱぱぱん、ぱぱん！　と、かぼちゃ風船はことごとくに割れていきました。



「むむむ……仕方がにゃい、ここまでにゃ！」
　会場の一体感に押されるまま、どうやら手持ちの風船を使い切ったらしく、逃走に転じるかぼちゃ猫。
「今日のところは、退散してやるにゃ……でも覚えておくにゃ！　このカボキャットＡは、変身するたびにパワーがはるかに増す……その変身を、ミーはあと２回も残している……その意味が、分かるにゃ？」
　多分進化してレアリティが上がって、みたいな意味でしょうけれど、ともかく不敵な捨て台詞を残しつつ。しゅば！　姿を消しました。
　ファミリーズとサンマさん、そして観客たち……みんなで掴んだ、勝利！　すかさず八神 修が、未だ戸惑いの中にあるスタッフに代わり、マイクを取って締めの言葉をば。
「サンマさんファミリーズ、そして皆さんの活躍で、今日も寝子島の平和は守られました。ご協力ありがとうございます！　なお、『カボキャットＡ』はゲーム中で倒すことで仲間にすることができますので、ぜひチャレンジしてみてください。それではこれにて、本日のイベントを終了とさせていただきます……ご来場、まことにありがとうございました！」
「みんな、これからも俺とファミリーの仲間たちを、応援してくれよな！」
　何だかんだでイベントを通じてのＰＲは、大成功に終わったようです……壇上でサンマさんが最後にそう呼びかければ、客席からは、盛大な拍手！
　もちろん、多喜 美律などはスタンディングオベーションで、
「最高のイベントだったわね！　きゃー、サンマさーーーん！」
　と大満足。
　今や会場には、たくさんの笑顔があふれ返っております。曖浜 瑠樹は、
「へへー、楽しかったねぇ！　オレ、サンマさんファミリーのみんなと、握手してみたいなぁ」
「ええ、皆さん快く応じてくれると思いますよ。行ってみましょうか」
「うんっ！」
　すっかり仲良くなった羅臼 コンブさんと手を繋ぎ、てててっと壇上へ。たくさんのキャラクターたちに囲まれたり、握手してもらったり、もふっと抱き着いたり……もう、満面の笑み！
（なるほど……流行るわけだな、このゲーム）
　海野 ラッコくんのウザ熱いテンションに押されるまま、何故だかここを訪れていた志波 拓郎も、何となく納得です。
　かんかん、かこんっ！　と機嫌良く鳴らした貝殻の音は、やまない拍手と喝采の声に紛れて、消えていきました。



　さて……そんな諸々の顛末を、彼はいざ知らず。
　旧市街の自宅へと帰宅した三夜 暗は、満を持して、『大行進！　サンマさんファミリーズ』を手持ちの端末へとインストール。ゲームを起動します。
「フフフ……いよいよか」
　今、彼は使命感に満ちておりました……何しろ、『☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ＧＮＲ　永遠なる時を揺蕩う黒き黙示録の獣 ミヤ・アン』を自らの手で引き当てておかなければ、大変なことになってしまうのです。何も知らない素人が万にひとつも、神である暗をモチーフとした強力すぎるキャラクターを手に入れてしまったりしたら、一体どんなことになってしまうのか？　彼自身にも、分かりはしません……ただ、そうなればきっと、恐ろしいことが起こってしまう。それだけは確かでした。
　と、少なくとも彼はマジにそう思っておりますもので。無料ガチャのボタンへ指をかけ、暗はそれを天へと……というか天井へと掲げ、叫ぶのです。
「さあ、出でよ！　永遠なる時を揺蕩う黒き黙示録の獣 ミヤ・アンよ……！　我が手へと来たれッ！！」
　ぽちり、ボタンを押した途端に。
　ずごごごご……どどどどど、ごごごごご！
「うわ……！？　なっなっ何だこれ、何が起こって……あ、ああ！　そうか、強すぎる我がパワーが時空を捻じ曲げ、ゲームの中のキャラクター、つまりはミヤ・アンを現世へと実体化させ…………あれっ」
　目の前に現れた、ソイツ。
　暗が目にするのは初めでであっても、この姿を、我々は既に目撃していたはず……細長い銀色の身体。自称サンマさんのライバルであり、数え切れないほどの兄弟姉妹がいる、水守 流の元へと出現して恐るべき被害をまき散らした、ハタ迷惑なアイツ……！
「いわっしー参上だわっしーーー！！　とりあえずご挨拶の、イワシ汁ブシャーーーッ！！」
「ぐわああああああっ！？」
　その後。わけもなくそこらじゅうを駆け回り、意味もなくイワシ汁を噴射しまくったいわっしーにより、三夜家はしばらくの間生臭かった。ということです。