授業風景～日本史の時間の場合～｜リアクション

授業風景～日本史の時間の場合～

「元寇といえば、遠い外国から侵略してきたイメージがあるのう。でも、モンゴルと日本には実は深い関係があるかもしれんのじゃ」
　続いて前に出たのは、メアリ・ラングストンである。
「モンゴル帝国の始祖であるチンギス・ハン……彼は源義経だったという噂があるのじゃ。そうであるならば、モンゴルが日本を支配した暁には、鎌倉幕府は新しいモンゴル幕府として認められるんじゃないかのう」
「チンギス・ハン＝源義経」説を踏まえた大胆解釈に、教室は驚きつつ感心した。
「日本の武将が登用されて活躍したり、巴みてーな美少女がモンゴルの王宮に入ったりしたかもしれんのう」
「はは、もしそうなったら後宮から王朝乗っ取りだな。則天武后コースだ」
　名指しされた桜崎巴が笑う。
「さて、日本人はそれまでの慣習から、ころっと違う方向へ突っ走れるノリがあるから、『モンゴル万歳！』なんて言って遊牧民の服を着て世界征服に協力して、ばんばん外の世界に乗り出すと思うのじゃ」
「うん、明治維新や戦後の民主化を見ると日本人の適応力は否定できないな……」
　若杉先生も苦笑して言う。
「そうしておったら、先頭は巧みな日本人のことじゃ、モンゴル人が苦手な島国のインドネシアとかオーストラリアとか、ベトナムのジャングルの征服とかやっとったんじゃないかのう。日本とは異なる理念の国が、日本人の手で打ち立てられたかもしれん。太平洋戦争よりもずっと早くにな」
　メアリの想像はさらにスケール感を増す。
「征服して血がまじることで、今の日本人とは異なる身体能力を持った日本人が誕生しておったんじゃないかのう。ネオ日本人、とでもいうのがな」

「日本人の力でどこまで世界を征服できるかは正直わからない。でも、民族にまで話を広げたのは鋭いね。日本は、きっと今のような均質な集団になってはいなかっただろう」
　若杉先生の短評だ。
　これでテーマ１は一区切り。教室は発表した面々に拍手を送った。