授業風景～日本史の時間の場合～｜リアクション

授業風景～日本史の時間の場合～

２．

　そして迎えた授業当日。若杉先生が楽しそうに教壇に登る。
「早速発表に行ってみよう。まずはテーマ１から。準備できた人から初めていい。トップバッターは誰かな？」
「はいっ」
　先生が促すと、桃川圭花が手を挙げた。
「では、私の血と汗と涙の集大成、聞いてください」

「もし、日本がモンゴルに征服されていたら、という話だけど。私の調べたとこだと、モンゴルの統治って案外ゆるいものだったみたいよ。
　支配地域で貿易のネットワークを作って、モノを徴収し、利益を上げる。要は幕府の上にもう一個幕府ができる、まあそんな感じ？だから、人々の生活なんかは大して変わらなそうかなー、なんて」
　圭花の発表に、若杉先生が補足する。
「モンゴルの征服事業では、抵抗する国は徹底的に破壊・略奪した一方で、おとなしく降伏した国は比較的自由な自治を許したそうだ。おそらく、日本を屈服させたあとは恐怖政治を敷いたりはしなかったろうね」
　椿美咲紀も発言する。
「幕府の将軍を任命するのがモンゴルの皇帝とか、そんな感じの支配になったと思うんです。実際の政治は日本人がやるんです」
「そう、大枠の政治史は変わらず、きっと国技も相撲のまんまでしょ」
　圭花が続ける。
「でも、こうなった場合面白いことが一つあるの。それは、ヨーロッパ圏と日本が一緒の国になるってこと」
「なるほど、モンゴル帝国の領域は現在のロシア地域まで達していたからね」
　若杉先生が付け加える。
「例えば、マルコ・ポーロの旅路は、広いけど全部モンゴルの支配下だったの。ひとつの帝国の支配下だからいろいろな旅ができたって人もいて、モンゴル帝国で面白いのはそこね。経済や文化が緩やかに統合した、そういう雰囲気。
　お菓子にファッション、文化に芸術……そのへんが混じり合ってたら、それってすごく刺激的なことになったんじゃない？きっと、あちこちまぜこぜの文化が誕生してたんだろうなって思うの」

　圭花の発表について、若杉先生がコメントした。
「モンゴル帝国の領域は、中国・朝鮮半島、中央アジア、中東地域、ロシアまで含まれる多民族国家だった。その中に日本が組み込まれたと考えると、スケールの大きな想像が広がるわけだね。いい発表だった、お疲れ様！」

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