寝子祭前日談　～準備はどうだい？～｜リアクション

寝子祭前日談　～準備はどうだい？～

　外では久良木優菜は自分が発案したスタンプラリーで使用する小道具のチェックや用意をやっていた。夕方には本格的な準備がはじまるので、今のうちに出来る事をやっておくのだ。
（一杯やる事はありますが、これぐらいでへこたれません！）
　準備が整ったところで次はスタンプラリーに協力してくれる模擬店をまわる。と、丁度模擬店の確認に来ていた響也と零の２人とばったり出会う。
「調子はどうだ？」
「あっ、篠崎さんと夏神さん！」
　彼の声に優菜は顔を挙げ、楽しげに笑う。転校生である優菜は１年生同様初めての寝子祭な為、とても張り切っているようだ。そんな様子がほほえましく思う一方、彼女同様初めての寝子祭となる響也と零もまた張り切っているのだ。
「今からスタンプラリーに協力していただけるチームの方へ打ち合わせに行く所です。そちらの調子はいかがですか？」
「書類の不備とかを何チームかに伝えたぐらい、かな。しっかし、皆、活気があっていいよな」
　優菜の言葉に、穏やかに返す響也。傍らの零もまた、辺りを見渡して瞳を細めた。活気付いた学校はとても楽しく、見ているだけで心が弾むようだ。３人は生徒たちの様子を見、益々寝子祭を良いものにしよう、と意気込む。
「拙者たちも、頑張らねばならぬな」
　彼の言葉に、優菜と響也も力強く頷いた。
　その後、響也と零はチェックに戻り、優菜も自分の仕事をするべく移動する。優菜は弾むように走り、秋風に髪を靡かせるのであった。

「あ……」
　模擬店の飾りつけなどを話しつつ歩いていた響也と零は、マリベル・ロイスの姿を見かけた。彼女は警備しつつ、所定の位置に物が置かれているかなどをチェックしていた。そして、当日はどこが混雑しやすいか、なども考える。
（折角委員会にはいったんやし、やることはやらんと。気張るで！）
　張り切って行動しつつ、とある事を思いつくマリベル。彼女はそこで漸く２人に気づいた。
「はりきっているようだな」
「だって、成功させたいやん。そや、ちょっと思いついたんやけど当日はトランシーバーとか使えへんかなぁ。ほら、迷子とかけが人とかでるかもしれんし……」
　マリベルは後で行われる会議でそれを提案しようと思う、と言えば響也と零も肯く。確かに、すぐに連絡を取れたほうが便利ではある。
後ほど行われた会議で出された彼女の提案は、満場一致で受け入れられる事になる。
　また、綾花は玄関付近に案内したり迷子を預かったりする場所を設置してはどうか、と提案。それも受け入れられ当日運用される事になった。
「トランシーバーは数が限られているから、気をつけて使ってね」
　顧問である久保田美和は委員メンバーに箱を渡しつつそういうのであった。

　その頃、街角では羽生碧南が寝子祭のポスターを街の掲示板に貼っていた。彼女が所属するバスケット部は今回の寝子祭に模擬店を出していない。その為、時間があるのだ。
　間近に迫った寝子祭は、街の人たちにとっても楽しみなようで、わくわくしている彼女の姿を見てほほえましく思う人たちもいた。
（ここなら見やすいかな？）
　と、町内会の掲示板にポスターを貼りながら満足げに肯く碧南。彼女は手持ちのポスターが無くなったので、一度学校へ戻る事にした。
　ポスターを貰うべく寝子祭実行委員会のアジトへ向かう途中、美化委員会の委員長である久地杏奈を見かけた。彼女は友達とチームを組み、育てた花を売るという。ちょうど花が枯れていないかチェックしている所を碧南が通りかかり、可憐な花々に瞳が釘付けになる。
　微笑ましく思っていると、彼女は杏奈が花へ「素敵な人の、お家に行けると、いいですね……」と囁いているのを聞いた。

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