せんせいといっしょ：高野先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：高野先生編

●いただきます！
　準備室で食べるのはさすがに狭かったので、噴水近くの中庭に陣取り陽の下でご飯を食べることにした。
　皆に先生特製（でかい）のおにぎりを配り、いいなの春キャベツと菜の花は小分けにして誰もが取りやすい位置に置いてある。
　トモエが元気よく手を合わせた。
「それじゃ皆、手を合わせて！」
「いただきます！」
　そして、ちょっと遅い昼食の時間が始まった。

「いいなちゃんのきゃべつと菜の花、おいしいのだ！」
「そうじゃろう！」
「紅玉ちゃんのお弁当すごいねー」
「それほどでもないが」
　高そうな風呂敷から出てきたのはこれまた高そうな、物理的にも高い重箱。
　４段もの高さを持つ漆塗りの蓋を紅玉が開けると、開けた隙間から眩いばかりの光が飛び出してきたような気がする。
「見た事もない食べ物がいっぱいだぞ……！」
「キラキラして見えるね！」
「そんなの太陽が眩しいからでしょ」
「毎日こんな弁当なのか？　豪勢だな」
「これは一体何という食物なのじゃろうか？」
「……ふん。食べたい物があれば、遠慮なく食べて良いのだからな」
「あ、じゃあ交換しようっ！」
「私もー！」
　からんが飛び付き、トモエも自分のお弁当包みを開いた。
　所々、焦げ目が顔を覗かせる所に努力を感じる。
「うちは今日はお弁当を作ってきてるんだよ。でも陸上部の部活まで持たないから、おにぎりも作ってきてあるんだー」
「あー、部活の前ってお腹空くよね」
「手作りかい？　美味しそうじゃないか」
「じゃあこれと交換なっ。……ん、美味しいぞっ！」
「えへへ、そうかな」
　嬉しそうに笑うトモエ。からんも美味しそうに食べてくれている。
「……それにしても、高野教諭は背が高いな……く、悔しい訳じゃないぞ！」
　俺様だってそのうち成長期に入るんだからなっ！　と紅玉。
「確かに高野先生はないすばでぃじゃのう」
　おにぎりと春キャベツを頬張りながら、いいなも先生をまじまじ見詰める。
「一応聞くが、背を伸ばそうと思えば何をしたら良いのだ？」
「あ、それ聞きたい」
「何をすればって……そうだな。基本的な所はちゃんと抑えるって所かね」
「基本的？」
「普通の生活を規則正しく送るってことさ」
　好き嫌いなくご飯を食べる、身体を動かす、睡眠時間をちゃんととる。
　毎日が毎日規則正しいのは難しいが、出来るだけ守るような努力が必要だ。
「そうすれば身体もちゃんと成長してくれるよ」
「からんはご飯食べるのも運動も好きだぞっ！」
「じゃあにょきにょき伸びちゃうかもな」
「にょきにょき！」
　答えを聞きながら紅玉は頷く。
　何だ。そんなこと、俺様にかかれば簡単なことではないか。
　これは一気に伸びてくるのも時間の問題かもしれない。
「はいはーい質問なのだ。胸は脂肪の塊なのだ、なのに何故体育科の有紀ちゃんセンセーに胸があるのだ！？」
　何人かがはっとした顔で有紀を見る。顔とを見比べられ、有紀も思わず確認。
　男性諸君は何となく顔を逸らす。
「皆にだってあるだろ？」
「それとは違うのだ！　ずるいのだ、真央ちゃんだって欲しいのだ！」
「別に鍛えようと思った訳じゃ……あ。胸筋、鍛えれば胸の厚みは増すぞ？」
「それはマッチョな方向なのでは」
　胸というか胸板というか。何か違う気がする。
「まあアンタ達らも成長期なんだし、後木もその内生えてくるって」
「生えるものなの！？」
「似たようなもんだろ」
「よーっし、じゃあ頑張って生やすのだー！」
　気合い十分の真央に、有紀はぽふぽふと頭を撫でた。

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