読書会　～語ろう、あなたの一冊を～｜リアクション

読書会　～語ろう、あなたの一冊を～

【１３番手　岡野丸美　少女と本】

「読書の幅を広げるきっかけにもなるかも、と思ってきました岡野丸美です」
　そういって、改めて丸美は自己紹介をした。
　砕けた口調ではなく、丁寧に本を紹介する。礼儀正しい。
「今日紹介するのは花卉　久家子の『ばけのかわを脱ぐ日まで』です。中学生向けの少女小説「青猫文庫」の一冊です。化けると言われているタヌキ、キツネ、ネコなどが本当は異界の住人だったという設定です。作中では元の世界に帰れなくなった彼らが人間に化けて学校に通っています」
「ほのぼのストーリーかと思ったら、異世界渡来ものだった！」
　円が、吃驚したように言う。
　ついでに、タイトルも少し物騒な気もする。とつぶやくが、刀はお前が言うなという顔をしている。
「文化の違いに戸惑ったり、人間至上主義に怒ったり、クラスメイトに恋をして悩んだり、正体がばれそうになって追われたり……笑いあり、涙ありの学園青春モノです」
　丸美の説明に、どのようなストーリーかそれぞれが展開を脳内で膨らませる。
「正体がばれたとたんに追い出されるのか、あぁ、だからばけのかわを脱ぐ日までなのね。いつか脱げる日が来るまで変えようと頑張るってことだろ？」
　そう言ったのは巴。
　丸美は、どうたったか思い出しながらいう。
「そういう展開になる……のかもしれません。まだ、着地点が曖昧な部分があるので……そういうのを見つけている最中とも言えるかもしれません」
　目的を見つけ、そこに進んでいくのは一種の王道である。
　シリーズの途中であるので、今後のストーリーの展開は楽しみにしているといいつつ、丸美は続ける。
「とにかく主人公のタヌキの女の子が可愛いです。それにライバルのネコや、なにかと絡んでくる嫌みなキツネなんかもそれぞれの気持の動きがよく分かって、共感できるし、嫌なタヌキ親父や意地悪な人たちにもそれぞれ理解できる理由があって、本当に悪い人はいないけど、でも仲良くも出来ないところにリアリティがあって私は好きです」
「異文化ってのは、下手すればそれだけで摩擦が生まれるからね」
　庵の言葉に、歴史好きなら色々と思うこともあるだろう。
　丸美は頷くと、付け加えるようにしていった。
「文化で思い出しました……この本は架空と思えないくらい異界の文化がしっかり描かれているし、日頃こういう本を読まない人にも取っつきやすいんじゃないかと思います。よければ、少しめくって見てください」
　そう言って、本を取り出して回す。
　こうして、紹介は締めくくられた。

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