夢で会えたら｜リアクション

夢で会えたら

【１８】俺のにゃるとスポーツ三昧してたら雪山の山荘で……以下略

　夢の噂を聞いた時、八神修は「面白そうだから、試してみたいな」と思った。
　だが、彼には特段、会いたいと思う人物がいない。そこで少し考えて、ギャルゲーキャラのにゃるに会ってみることにした。
　彼のにゃるは、『あお』という。同級生の七夜あおいに似ていた。
　その夜彼は、あおの名を書いた紙で願いをかけ、それを枕の下に入れて眠りに就く。
　はたして――。
「修君、こんにちわ～」
　ゲームのスタート画面そっくりの場所で、彼はあおに出迎えられた。
「俺のこと、覚えているのか？」
「もちろんです。プレゼントとかー、一杯もらったじゃないですか」
　尋ねる修に、あおはにっこり笑って言う。そして問い返した。
「今日は、何をして遊びましょうか」
「そうだな……スポーツ三昧ってのはどうだ？」
　少し考えてから答える修に、あおは心配げな顔になる。
「でも、修君、体力は大丈夫？」
「問題ない。俺だって、かなり鍛えたんだから、遅れは取らないぞ」
　対して修は、笑顔でガッツポーズを作ってみせた。そして続ける。
「今の時期だと秋だから――」
　言いかけて、彼はあんぐり口を開けた。
　あたりはいつの間にか、雪の山中にある山荘へと変わっていたのだ。しかも、壁にはスキー用具が掛かっている。
「……ああ、夢か。夢なんだな……」
　ハハハ……とうつろな笑いを響かせて、修はある意味、当然のことを呟いた。
　そんな彼を尻目に、いつの間にかスキーウェアに身を包んだあおが、用具を担いで戸口へと向かいながらふり返る。
「修君、早く行きましょう」
「あ、ああ」
　促され、夢なら夢でいいかと割り切った修は、彼女との雪山を楽しもうと決めた。
　そのあとは、二人でスキーのコースを作ったり、山荘前で雪だるまを作ったりと、おおいに楽しんだ。
　そんな中、突然吹き荒れる吹雪。修とあおは、慌てて山荘に戻った。
（これは……しばらく帰れそうにないな……）
　窓の外を見やって、修がそんなことを考えていた時、あたりに鋭い悲鳴が響いた。
　事件だった。宿泊客の一人が、部屋で死んでいたのだ。
　山荘は、備え付けの電話はおろか、携帯電話も通じないことが発覚。更には、オーナーと客たちの間にもなんらかのつながりがあることが、判明する。
（……閉ざされた山荘で殺人って……なんのサスペンスだよ。連続殺人の予感がビンビンだ）
　その状況に、修は眉間にしわを寄せて考える。そして言った。
「こうなったら、俺たちで謎を解くしかないな。祖父と八神の名にかけて……！」
　だが、事件はほどなく解決した。
　突然、銀色の装甲服に身を包んだ『宇宙刑事』を名乗る人物が現れ、女性客の一人を拘束したのだ。
「お騒がせしました。この女は、護送途中に逃げ出したマゼラス星人の犯罪者です。殺されたのは、この女を追っていた私の同僚です」
　『宇宙刑事』の言葉に、女の姿は一瞬にして人型からタコのような奇怪な姿に変わる。
　そして、突然流れ始める音楽。
（……これは、『木曜サスペンス劇場』のエンディングテーマ……）
　妙に聞き慣れた曲に、ふと修は眉をひそめて呟いた――。

　目が覚めて、修は思わず苦笑した。
　頭の中で、まだ木サスのエンディグテーマが鳴り続けている。
（……あおに会えたことは会えたが、おかしな夢だったな）
　胸に呟き、まあいいかと肩をすくめた。
　とりあえず、噂が本当らしいということは確認できた。目的の人物にも会えて、夢の内容も楽しかったと言えば言える。
　ともあれ、まだ朝には早いと、もう一度寝なおすことにして、彼は目を閉じた。

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