押してダメなら、押し倒せ。
そういう持論があるかはさておき、
稲積 柚春は大人しく『待て』をするつもりは無いらしい。
先日、彼女から告白をされた
ウォルター・Bは柚春の想いを受け入れた。
……と言っても、ウォルター自身が柚春と同じ『特別な気持ち』で彼女を慕っているということを認め、互いの想いを確認し合っただけ、とも言えるだろう。
交際をしてもいいと返事をしたし、好きだと告げた。でもそれは、『それくらい真剣だ』と想いの強さを伝えるための表現であり、柚春の未来を縛ることなど望んではいない。
少々狡い言い回しではあったという自覚はある。
好きだからこそ『今は』付き合えないと答え、恋人の席を空けておくと約束をすれば、彼女がどういう行動に出るのか予想も出来た。その上で、ウォルターは包み隠さず想いを伝えたのだ。
――待てずに撤回するかもしれないけどね?
そう意地悪く微笑むくらいには余裕があったし、それを崩すくらい彼女が魅力的になってしまったのなら、肩書きなんて気にして手をこまねいてなどいられないだろう。
彼女がよく言う『先生と生徒でも純愛ならば問題ない』という言葉には、男として悩ましく思うこともあるかもしれないが、その時はその時考えればいい。
多感な時期には親友を喪い、適当に時間を潰すような遊びの恋愛しかしてこなかったウォルターにとっても、子供から大人へと羽化する狭間にいる柚春にとっても、互いを特別に想うこの気持ちは未知数だ。
一時のものとなるか、永遠のものとなるか。共に紡いでいけるかなんて、過ぎてみなければわからない。
遊びではないからこそ、戸惑いもするだろうけれど。そう簡単に、振り回されることもないだろう。
いくら若さ眩しく情熱的な想いをぶつけられても、一回り以上も年上で恋愛経験だってある。あの手この手を使って意識を向けようとしたところで――。
「……どこへ行きたいって?」
余裕綽々な笑みを浮かべていたはずのウォルターは、ティーカップをソーサーに置いた。
つい柚春の勢いに飲まれて快諾しそうになったが、テーブルの上に並ぶ旅行のパンフレットは近隣の物ではない。
「縁結びのお参りにね、行きたいなぁって」
その願い事自体は、実に可愛らしいものだ。
付き合っていないからこそ、この縁が確固たる物であるようにと祈りを捧げたい。となると、できるだけ御利益があって二人で訪れやすいところにと考え、少し遠出しようと言い出すのは理解できる。
確かに近所だと出かけやすい反面、デートとして歩くには人目が気になる。これくらいの我が儘は、聞いてやれないほど小さい男ではないが。
「それで、島根県ねぇ……」
年末年始ともなれば、大きな神社はどこだって混雑する。
神在月が一番混むと言われている出雲大社であっても、その反動でこの時期の人出が引くわけではない。
ぱらりとパンフレットを捲れば、電車を乗り継ぎ寄り道をお勧めしたコースや寝台列車など、移動手段は多岐にわたる。今は冬休みだし、こうした旅行も悪くはないけれど。
どうしてもそこには、『宿泊』の二文字がついてまわる。いくら別室を取ったとしたって、今の肩書きどころか交際もしていない間柄では、さすがによろしくないだろう。
「縁結びをお願いするなら、他にもあるでしょ。君の好きそうな恋愛スポットだって――」
「僕がお願いしたいのは、恋愛関係じゃないんだけど」
呆れたように宥められて、今度は柚春が呆れる番だ。
――生きてるよ。
名前も知らぬ
少年が言った言葉。
夢でしか逢瀬の叶わぬ、不思議な彼の
言葉は、その存在と同じくらい不確かで信憑性など無いに等しい。
けれど彼は言った、
赤毛の少年が生きていると。
真実を知るのが怖くて追いかけられなかった柚春にとって、その言葉は事実であってほしかった。
そして、会うことが叶わないならせめて、赤毛の少年のために出来る限りのことをしたい。
「もしもって思うとね、立ち上がれなくなりそうだから……一緒に祈ってくれないかな」
ウォルターと一緒に前を向こうと約束した
あの日に、覚悟をしたはずだった。
引き金を引く準備をして、前に進むはずだった。
でもまだ。
一人で立ち向かうには恐怖があり、柚春はウォルターに支えて欲しいと願ってしまう。
「欲張りでごめんなさい。どうしても、とっても強い縁結びのお願いをしたいんだ」
力なく笑う彼女は、詳細を伏せた。
けれど柚春が、ただ浮かれて恋愛成就にと切り出したのではないと知り、ウォルターはもう一度パンフレットに目を落とす。そうして、いくつかのパンフレットに重なっていたチラシに『日帰り』という文字を見付けた。
「こんなに遠くの人混みに、一人で行かせるのも心配だしねぇ……」
彼女が何を思って、こんな頼みをするのかはわからない。
けれど『独りにさせない』と抱きしめてくれた彼女を、独りにさせてはいけない気がした。
リクエストありがとうございます、浅野悠希です。
こちらは、稲積 柚春さんのプライベートが満載なシナリオです。
概要
ウォルター先生と事前にお約束をして、鳥取県まで日帰り旅行です。
■状況
寝子島から羽田に向かい、飛行機で出雲まで。
行き先は、出雲大社を中心に周辺を自由に観光して頂けます。
天気は1日晴れ……という予想だったのですが。
もしかしたらにわか雪やトラブルに見舞われることもありそうな予感がします。
■できること
特に制限を設けていません。
行き帰りの移動中、出雲大社に着いてからといった、ウォルター先生とのデートはもちろん、
Xキャラ視点による別の物語など、場所と時間は自由です。
ガイドに縛られず、自由にアクションを書いて頂ければと思います。
もちろん申請いただきました内容も、描写可能ですのでご安心くださいね。
※もしXキャラの描写量をPCやNPCに振り分けたいなど希望があればお知らせ下さい。
可能な範囲でにはなりますが、できるだけ対応致します。
NPCとXキャラ
今回登場とお伺いしてますのは、NPC:ウォルター・B
稲積さんの決意を受けて、今回の旅行を承諾してくれました。
デートプランは稲積さんにお任せですが、思い詰めている様子を心配しているようです。
トラブルがあっても余裕綽々な態度は崩しませんが、はてさて。
※ご指定頂いたシナリオの思い出共有は可能です。
追加の参照が不要であれば、改めての資料送付はなくても大丈夫です。
Xキャラ:緑林 透破(вор)
ご指定頂いたシナリオと、プロフィールを参照させて頂きます。
追加の参照が不要であれば、改めての資料送付はなくても大丈夫です。
※通常シナリオと違い、Xキャラを単独で自由に動かすことができます。
Xキャラ:赤毛の少年
ご指定頂いたシナリオと、プロフィールを参照させて頂きます。
追加の参照が不要であれば、改めての資料送付はなくても大丈夫です。
※通常シナリオと違い、Xキャラを単独で自由に動かすことができます。
※独自ルール※
参照シナリオ、アイテムの持ち込み、Xキャラの情報をアクションに記載する際、 短縮表記が可能 です。【参照シナリオについて】
他のシナリオ、コミュニティなどの描写や設定を参照することは、原則的には採用されにくいとなっています。
・事実を確認するだけで良く、深い読み込みがいらないもの
・どうしても前提にしてもらわないと困るもの
これらに関しましては、できる限り参考にしますので『URLの一部』をお知らせ下さい。
【例】シナリオID3242の9ページと、トピックID2853の181番目の書き込みを参照依頼する。
- T/2853/181の結果を受けてS/3242?p=9で●●を成功しました。●●の情報はある前提の行動です。 -
など、シナリオを『S』としたり、トピックを『T』としたり短縮表記で大丈夫です。
IDから該当ページまでのURLは省略せず、そのまま提示して下さい。
・過去参加して頂いた浅野のシナリオに関しても、記憶違いを避けるためにご協力頂けると助かります!
・必須じゃないけど知っておいて欲しいなという事柄については、余力があれば確認させて頂きます。
【アイテムについて】
カプセルギアなどアイテムを持ち込む際、指定単語と共にマイリストIDまたはアイテムIDを記入してください。
【例】牧 雪人が『【カプセルギア】ボナパルト2』を持ち込む場合
CG/206 ……と記載してください。
・カプセルギアを『CG』、その他マイリストを『ML』、アイテムを『I』と記載して下さい。
※なお、アイテムやマイリストは、アクション送信時の情報が保存されません。
執筆期間中に編集を行うと、アクションと齟齬が出てしまう可能性があります。
投稿締切から1週間は、該当のアイテムやマイリストを編集しないようにご協力ください。
【Xキャラについて】
Xキャラ図鑑はトピックなので、参照トピックと同じ手順で短縮可能です。『URLの一部』をお知らせ下さい。
X/2892/(書き込み番号) をお知らせ頂くか、
またはイラストページに補足がある場合はXI/(イラストID)も合わせて記入してください。
※浅野の独自ルールのため、こちらは他MSへ対応を迫る行為はお控え下さい。
それでは、よい1日をお過ごし下さいね!