『運命』ではなかった始まりを『必然』に変えたあなたへ｜リアクション

『運命』ではなかった始まりを『必然』に変えたあなたへ

　涼しくなった頃から大騒ぎしていた柚春が、ようやっと一段落ついた……と、思う。
　あれこれ考えすぎて夜更かしもするし、眠りも浅そうだったからロクに揶揄うことが出来ずにいた透破は、久しぶりに柚春の夢へと訪れた。
　まあそれも透破の感覚によるもので、実際のところは長く会わないことなど無かったのかもしれないが。
「楽しそうじゃん？」
　不安げにしては勇気を奮い立たせ、だけどと落ち込んではそれでもと気合いを入れ直す。そうして今では、明るく笑えるようになった。
「うん、あのね！　いいことがあったの！」
　全てを聞いていたし、すでにворへの報告もあって、透破には良く知る話だ。それでも、理解までは及ばないことも多く、問い返したいことはいっぱいだ。
「ふぅん、どれくらい？」
「とっても！　……だけど、まだいっぱいっていうには届いてなくて」
　言葉のニュアンスが難しい。思案顔を見せる柚春は、本当に幸せそうだ。
（殴り飛ばすほどのことは、言ってなかったと思うけど）
　あの男はいつも、はぐらかす言葉ばかりで、真っ当に質問へ答えたことなどほとんどない。それがヒトの不安定な心だというなら不満ながらも納得するしかないし、オトナの言い訳なのであれば殴り飛ばしてでも考えを改めさせなければならない。
（柚春が傷ついてないのなら……それでいい）
　甘い言葉を囁けと言っているのではない。それが嘘なら意味は無いのだ。
　ちょっとは柚春を見ようとしている素振りを見せたから、どんな答えであろうとも彼女と向き合うだろうと思いたかった。
　……信頼とまでは言わないが、柚春の心を壊すようなことはしないと思って、大人しく鞄に入れられたままでいたのだ。もしあの場で、彼女の気持ちを否定したりはぐらかしたり……あまつさえ、ずる賢く気を持たせた腕でキープするなんてことがあろうものなら、飛びかかっていただろうけど。
（そこまでサイアクな態度だったら、殴る価値もないな）
　あれはそうではなくて、あの男の本心で。柚春を思うからこその、選択。
　まるでそれは、全てを託したアイツのように真剣な想いだと、そう思ったから。
「……幸せ？」
　そうであるように、願われている。傷つかないよう守り抜くことを約束した。
　満面の笑みを見せる柚春を見て、わかった。
（これは……オレの意思だ）
　作られたからじゃない、アイツとの約束だからじゃない。
　柚春の幸せを、心を、壊すヤツは絶対に容赦しない……それが、誰であっても。
「生きてるよ」
　ぱちぱちと瞬く柚春は、要領を得ない顔をしている。
　それはそうだ、彼女は透破の名前も、誰と関係が深いのかも知らない。
「赤い髪の……男の子を知ってるでしょう？」
　引っ越しや転院の都合で連絡の取れなくなった、生死のわからなかった男の子。
　その存在は、今の柚春の――幸せを、脅かすのだろうか。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希
ファンレターはマスターページから！

この度はリクエスト頂きありがとうございました、浅野です。

テーマパークは、西も東も大好きなので、とっても楽しく書かせて頂きました！
ただ、特定のアトラクションを周回で乗るタイプなので、知らない小話もあったり。
い、いえ、知っていましたよ？　そういうメルヘンな場所だってｼｯﾃﾏｼﾀﾖ……！

細かいパーク情報などは、個別で解説致します。
２人の思い出を想像する際の参考になって、少しでもニャンドの空気が伝わったら嬉しいです。

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