≪お三夜まつりの伝承≫(旅行ガイドブック『寝子島の歩き方』より)
その昔、九夜山から火を噴いて暴れていた大きなナマズがいた。
そのとき赤い目をした黒猫が、そのナマズを三夜かけて鎮めたという。
この黒猫こそが、現在の寝子島神社の御祭神であるお三夜様だ。
九夜山の山頂には三日月形をした湖『三夜湖』がある。
この湖は、三日三晩泣き続けたナマズの涙が溜まったものだとも
ナマズを宥めるためにかき集めた酒を山頂のくぼみに注ぎこんだら
湖になったとも言われている(諸説あり)。
お三夜まつりの日は、朝から寝子島神社から三夜湖までお神輿を担いだり
三夜湖のほとりにある小さなお三夜さまのお社に魚を奉納したりする。
夜になると、寝子島神社の境内にたくさんの露店が立ち、盛大な祭りが開かれる。
お三夜まつりの夜は「猫の世界」と「人の世界」が交わりあうという噂もあるので
もしも11月に寝子島を尋ねる機会があれば、真偽を確かめてみるのも楽しいかも。
「お三夜さまがかどわかされた?」
お三夜さまとゆっくり祭りを楽しもうとやってきたのに、境内に入った途端、顔なじみになった狛猫の
一之助と
二右衛門が急を知らせる声とともに駆け寄ってきて、
シオ・レイゼルオークは目を白黒させる。
賑わう寝子島神社の境内。
「風船提灯」や「運命万華鏡」などと奇天烈な文字の踊る屋台が並んでいる。
歩いているのは猫の面を被った人間。
二足歩行で立って歩く猫。
人間に化けているのだろうが髭や尻尾が残ったままの猫。
いつもどおりの猫のままの猫。
なかには見るからにあやかしと思える者もいるが、お三夜まつりの夜だから不思議なこともあるのだろうと、ほとんどの人は気に留めていないようだ。
「お三夜さまというのは赤目の黒猫のことか? それなら儂はみたぞ」
狐の耳をひくつかせて、
片夏 阿呂江がシオたちに話しかけてくる。
「なにやら青く光る闇のようなものに掴まって、ほれ、あの鳥居の向こうに消えた」
阿呂江が指差したのは手水舎の奥にある、ナナメに傾いだ赤い鳥居だった。
シオは、おや、と首を傾げた。
寝子島神社にもお三夜まつりにも何度も来ている。
だが、あんなところに鳥居を見たことなどない。
「あれ、なんです? あんなに傾いて……三千鳥居の迷宮の入り口ですか?」
一之助と二右衛門を見遣る。三千鳥居の迷宮とは、年に一度お三夜まつりの夜にのみ現れる猫たちの試練場のような場所だが――。
「違いまする!」
「あんな鳥居は知りませぬ!」
一之助と二右衛門は口をそろえて首を横に振る。
「あれ、霊界の銀朱駅に繋がってるんじゃないかなあ」
ふらり現れそう言ったのは、コンバットブーツの付喪神である
漫 歩であった。
「人間界にひっそりと現れた鳥居って、霊界の銀朱駅に繋がってることがあるんだ」
そう言ってから歩は、気まずそうに頭を掻いた。
「……あ、ごめん。急に話に割り込んで。ちょっと、気になる単語が聞こえたものだから。
青く光る闇って」
「そなた!」
「お三夜さまをかどわかした者を存じておるのか!?」
一之助と二右衛門が歩に詰め寄る。
「存じておるというか……」
「青く光る闇、ってどろでろろのことじゃないかな、って」
歩は
自分が出くわした事件のことを掻い摘んで話した。
「つまりどろでろろとは、霊界生まれの悪しき魂の集合体のようなものでござるか?」
話を聞いた一之助が言った。
「
人の負の感情が集まって生まれた、霊界特有の自然現象的災厄……とかって言ってたかな。人の心の闇に反応し、それを喰らって力をつけるみたい。いまは
黒白 滴ちゃんっていう女の子の心の闇を糧に大きくなって、彼女に使役されているみたいだけれど」
「神を喰らおうとは不届きなやつめ!」
「よくわからぬが、そいつがお三夜様を! しかも、よりにもよってお三夜まつりの夜に、とは!」
一之助も二右衛門は今にも、傾いた鳥居に向かって駆けだしそうだ。
「お三夜まつりの夜だととくべつ困ることがあるの?」
歩が尋ねると、一之助は『阿』と口を開け、二右衛門は『吽』と口を引き結んで同時に吠えた。
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「「祭りの終わりを告げる花火が上がるまでにお三夜様がお社の中に戻らなければ、
猫と人間の世界の融合が解けずに、世界がおかしくなってしまうのでござる!」」
「落ち着くのじゃ!」
一喝したのは阿呂江だった。
「狛猫のおぬし共が浮足立ってどうする! おぬしたちはここでドンとしておれ!」
「しかしお三夜様が!」
「心配ない。儂がこれで救出隊を結成してやるぞ!」
阿呂江がじゃじゃんと取り出したるはスマホ! 妖怪もスマホをもつ時代である。
かくして。
楽しい祭りを楽しむ者あり。
阿呂江の呼びかけに応えて傾いた鳥居をくぐり、霊界は銀朱駅へと向かうものあり。
シオは星空を見上げて祈る。
「お三夜様……どうかご無事で」
こんにちは。
ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
8年ぶり?にお三夜祭りを担当させていただくことになりました。
シオ・レイゼルオークさん、片夏 阿呂江さん、漫 歩さん、ガイドへのご登場ありがとうございます。
猫も人間もあやかしも、みんなヨイヨイ。
なんだか不穏なことになっていますが、何も知らずに不思議なお祭りを楽しむのもオッケーです!
猫たちも、猫のままだったり人間に化けたりして祭りを楽しんでおり、
この日だけは誰でも猫と話が出来ます。
ろっこんも、不思議と思われにくいのでひとの前でも発動しやすいです。
あやかしさんも、あやかしの姿のまま過ごせます。
アクションでできること
主な行動は、以下のABのどちらかひとつを選んで、
必ず「キャラクターの行動」欄の冒頭に【A】【B】と記入してください。
【A】寝子島神社で、不思議な縁日を楽しむ
日常メインのストーリーです。
神社の参道は、石燈籠の灯りの中に人間の露店と猫の露店が混じり合って、
不思議な光景が広がっています。
耳福池周辺では、猫の宴会も開かれているようです。
こちらの選択肢を選ぶ貴方は、お三夜様が消えたことを知りませんので
何も心配せずにお祭りを楽しんでいます。
※ガイドにご登場いただいた方でこちらの選択肢を選ぶ場合は、知っていて構いません。
●露店を楽しむ
リンゴ飴、わたあめ、焼きそばなど、普通のお祭りで出ていそうな露店や、
一夜明けるとガラクタになってしまうような、一風変わった品物を売る不思議な店など
さまざまな露店が出ています。
お客や店主が猫なことも。
今宵だけは、飼い猫や野良猫たちと会話もできます!
例えば、猫たちの店には次のようなものがあります。
・水風船の形をした色とりどりの提灯「風船提灯」
・一瞬だけ運命が見えるという触れ込みの「運命万華鏡」
・水の中で遊べる「水中花火」
・素早く走るネズミが的の「ネズミ射的」
・高速で渦巻く水槽の中から金魚を釣る「高速渦金魚釣り」など
みなさん自身が、自由にお店を構えることもできます。
ふつうのお店でも、一風変わったものを売る店でも、この日だけはなんでもありです。
飼い猫や野良猫を店員に雇ったりもできます。
お店を出される方は、コメントページをご活用いただくと、
他の方もアクションを掛けやすいかと思います。
不思議な猫の品物を買ったり、猫や人間のお店に入り浸って手伝ったり、
人間や猫のお友だちと楽しんだり。お好きに楽しんでしまいましょう。
●耳福池周辺で、猫の宴会に混ざる
猫たちが耳福池のほとりで宴会を楽しんでいます。
そのほか耳福池に小舟を浮かべてデートしたり、縁日で買った食べ物や玩具で楽しんだり、
水中花火で遊んだり、みんな思い思いに楽しんでいます。
そのほか、思いついたことがありましたらご自由にどうぞ。
【B】祭りのウラでフツウを守る
バトルメインのストーリーです。
「どろでろろ」と呼ばれる青く光る闇のあやかしが
お三夜様を霊界・銀朱駅付近に連れ去ってしまいました。
狛猫たちによると、
「お祭りの終わりを告げる花火が上がるまでにお三夜様がお社の中に戻らなければ
猫と人間の世界の融合が解けずに、世界がおかしくなってしまう」そうです。
こちらの選択肢を選ぶ貴方は、この情報を、狛猫たちや友人から聞いたりして知っています。
寝子島のフツウを守るため、お三夜様を探して、助けてください。
●霊界・銀朱駅付近
寝子島神社の境内に現れた、傾いた鳥居をくぐると、霊界・銀朱駅に繋がっています。
銀朱駅は寝子島でいうと旧市街付近にあり、古めかしい駅舎が特徴的。
銀朱駅のまわりには無数の鳥居があり、迷路のようにうねりながら道を成しています。
両替屋ボンという、丸顔で垂れ目の中年男性の姿をしたタヌキのあやかしがおり、
自分の目で見たことやあやかしたちからの目撃情報をくれたりします。
●敵
鳥居の道では「どろでろろ」が襲い掛かって来ます。
「どろでろろ」は青く光る闇で形は不定形ですが、
今回は【子蜘蛛】の姿です。
【子蜘蛛】は1体あたり体長20~30センチ。
何百もの群れで行動し、人間やあやかしを見つけると、
糸でぐるぐる巻きにして吊るし、内部で溶かしてしまいます。
ぐるぐる巻きにされてしまうと、30分で服が溶け、
1~2時間で体まで溶けてしまうでしょう。
子蜘蛛、糸ともに、斬撃や打撃は有効です。
ろっこんやあやかしの能力なども駆使して戦ったり躱したりしてみてください。
●お三夜さま(銀朱駅付近にいるあやかし・両替屋ボン情報)
鳥居の道の最奥で、体長5メートル以上ある
八本足の巨大な【母蜘蛛】のどろでろろが出す糸に
ぐるぐる巻きにされて囚われています。
【母蜘蛛】は巨大なクモの巣を作って待ち構えており、
口から吐く糸や、素早い動きで襲ってきます。
強力ですが、斬撃や打撃が有効である点は子蜘蛛と変わりません。
●黒白 滴
どろでろろを使役することができる少女。
今のところ姿は見えないが、どこかで見守っているかもしれない。
その他
●参加条件
とくにありません、どなたでもご参加いただけます。
●登場NPC
お三夜様……寝子島神社のご祭神。黒くて赤い目をした猫。神様なので普通の猫よりは強い……はず。
狛猫たち……心配性の「一之助」と、しっかり者の「二右衛門」。
気は急いているものの、寝子島神社を守護する者として、お三夜様の帰りを待つことに。
黒白 滴……どろでろろを使役することができる少女。
両替屋ボン……銀朱駅付近にいる丸顔で垂れ目の中年男性の姿をしたタヌキのあやかし。情報通。
野々 ののこ……【A】のお祭りで遊んでいます。
野々 ととお……【A】でおまつりを見物しています。
ののこが楽しんでいるか、陰からこっそり見守って(ストーキング?)しています。
テオ&ミラ……異変が起きていることに気づき、寝子島神社の屋根の上にいます。
すでにもれいびやあやかしたちが動き始めたのを見て様子を見ているようですが、
何かあれば介入するでしょう。
とはいえ、今は出来ることがないので、誘われればおまつりに交じるかもしれません。
NPCについて
登録済みのNPCなら、特定のマスターが扱うキャラクターを除き、基本的に誰でも登場可能です。
ただし、特定のNPCをずっと独占する・事前に約束していたなどの内容は採用できません。
時間帯の指定を避け、偶然おまつりor銀朱駅で会った、という体のアクションにしてください。
Xイラストのキャラクターを描写する場合、
PCとXキャラの2人あわせて「1人分」の描写です。
※Xキャラだけで1人分の描写とすることも可能です。
その場合は、PCさん自身は描写がなく、Xキャラだけが描写されます。
Xキャラのみの描写をご希望である旨を、アクションにわかるようにご記入ください。
※Xキャラをご希望の場合は、口調などのキャラ設定をアクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
縁日を見て回ったり、宴会を楽しんだり、フツウを守ったり、
猫と人間とあやかしの世界が交わった不思議な夜をお楽しみくださいませ。
ご参加お待ちしております。