怪人セブンの暗躍｜リアクション

怪人セブンの暗躍

　刻人・F・ミセリアは、職員に頼んで過去の新聞記事を取り寄せてもらっていた。
「ありがとうございます。そうです、この記事です」
　刻人が取り寄せた新聞の一面には、叢雲教団代表の神武（じんむ）こと剣崎神衣（けんざきかむい）が逮捕された時の写真が大々的に掲載されていた。
　他にも草薙製薬が絡んだ記事を探して、ひとつひとつ過去の新聞に目を通していく。
　草薙製薬の背後には叢雲教団の存在がある事実を刻人は掴んでいる。
　それを再度洗い直し、新たな発見が得られればと思っている。
（えっと、そもそも、神武が逮捕されるきっかけになったのは、現職の自衛官Ａが不正に銃火器を横流ししていたことが発覚した事件から、と……）
　記事によると、今年４月に発覚したこの事件を追求していく際、その流通ルートが何人もの仲介を経て全て叢雲に行き着くことが判明した。
　また、内部告発の情報で叢雲が銃火器を違法に収集している事実を掴んだ警視庁は、全国に点在する叢雲教団の拠点を一斉に強制家宅捜索。
　各地で押収した銃火器類または装備は、およそ300名分ほど用意されていたそうだ。
　代表の神武に任意聴取したところ、教団側の武力決起計画が判明。
　これにより翌月、神武ほか代表幹部数名を銃刀法違反とその他の罪で逮捕した、と報じられていた。
（たしか、結構大々的に報じられていたっけ……？　国家転覆罪が報じられていないということは、そこまで重要機関への襲撃計画ではなかったんだろうけど……）
　刻人はさらに深く推理した。
（やっぱり、計画内容は寝子島襲撃だったのかもしれないね……。報じられていないから憶測の域を出ないけど、今までの叢雲の行動を鑑みれば、それが一番しっくりとくる）
　寝子電スタジアム占拠事件は実際に発生した。
　あの事件は泉月花が実行部隊をそそのかした、と九重が話していた。
　神武はなぜ、そうまでして武力行使の準備をしていたのか？
（うーん、まだ読めないな。それに神武の人となりに関する記事が少なすぎる。……とりあえず、黒依さんに報告しておこう）
　刻人は黒依を手招くと、物陰で耳打ちした。
　桃髪のセブンの情報は、既に前回の事件の後にメルマガで流れている。
　更に朝野が見付けた魅紗歌の小学校時代の卒業写真。
　そして刻人の推理。
　それらを話した上で、刻人は尋ねた。
「あの事件以来、九重と会ったのかな？」
　黒依は静かに頷いた。
　そして首から下げている嫉妬の黙示録のイミテーションを見せた。
「みんなのお見舞いに行った時に、これを譲り渡されたわ」
「これは？」
「九重さんの持っていた嫉妬の黙示録よ」
　だが、これがイミテーションであることは明かさなかった。
　敵を騙すには味方から。
　情報班の班長として開示する情報は自ら制限しなければならないのだ。
「ふぅん、わりとあっさり他人の手に委ねちゃうんだね」
　僕は興味はないけどね、と付け加えるとその場から立ち去った。