６月の雨の中｜リアクション

６月の雨の中

　目を覚ました千代子に挨拶をして、三下邸を後にしようと席を立った拝島薫は足を止めた。
　メールの着信音、差出人は後木真央。
「薫さん、どうかなさって？」
「メール、真央ちゃんからです」
　目を通せば “薫ちゃん、ベランダを調べて見て欲しいのだ” との事。
「ベランダを？　何があるのかしら」
「さあ、何でしょうね？」
　雨上がりの、藍色の闇に沈んだ光景。この丘からは、街灯りが星の波のように広がる。
　窓を開けば、白い手すりに残された小さな花束と、可愛らしくハートに折りたたまれた一筆箋。
「まあ、可愛らしいお花だこと。真央ちゃんからのプレゼントね？　私が寝ていたから、遠慮したのね。もう少し早く起きたら会えたのに、残念だわ」
　口惜しそうにしながらも、花束を手にマダムは嬉しそうだ。

「奥様、手紙もついてますよ」
「あら、何かしら？」
　真央から送られた“ハート”を開けば、ころころした女子高生らしい文字が綴られている。
　それはただ、ひたすらに無垢な願い。

　今日は神さまが、みんな手を繋ぎたくなる魔法をくれたのだ♪
　ベランダまででも、出られたら外を見てほしいのだ♪
　世界中が手を繋いだら、歩き難そうだけど楽しそうなのだ♪
　いつか一緒に、お散歩しましょうなのだ♪

　　　終

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あとがき

担当マスター：メシータ
ファンレターはマスターページから！

　メシータです。
　手を繋ぐというそれだけの事に、人は色々連想するものですよね。とても不思議です。
　今回、それに付随する、それぞれの想いに触れさせていただき、光栄でした。
　このシナリオが皆さんの良い思い出になれば、幸いです。

　そうそう、NPC犬飼未央の怪我へのお気遣い、ありがとうございます。
　元々、ろっこんで治療していただいていた事もあり、6月いっぱいで治ると思われますので、心配はご無用です。
（ちなみに、らっかみ！タイムがのんびり進んでいる事もあって、便宜上現実より早く治るものだと考えてください。もれいびは決して怪物ではありません）
　マダムの方は、一歩ずつ快方に向かっているという感じですが、本文中で未央が言ったように、手術まで漕ぎつける事が出来る状態に持って行く＋術後にろっこんでの介入を可能にする事、この二つをクリア出来れば案外早く完治出来るかと思います。
　人目の問題など、解決しなければならない問題もありますが。情報として。

　では。当シナリオへのご参加、まことにありがとうございました。

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