＜鈴島海賊の秘宝I＞海賊女王のピラミッド｜リアクション

＜鈴島海賊の秘宝I＞海賊女王のピラミッド

●寝子島、１８時半の夕方ニュース

「――さて、次のニュースです。今日の夕方、寝子島の九夜山の麓で、謎の発光現象が見られました」

　テレビの画面は女性アナウンサーから、携帯で撮影したと思しき手振れのひどい映像に切り替わる。
　風が強いようだった。建物と建物の間で、黒い電線がぶわぶわと揺れている。
　画面右手に九夜山の端が見え隠れしている。
　その裾野付近、画面の左手の空に一か所だけ入道雲のように分厚い雲が掛かっている。
　撮影者ははじめ、そのめずらしい雲を撮ろうとしてカメラを回したのだろう。
　ごろごろと雷の音が聞こえる。
　『あれ、なんだ？』と声が入った。
　次の瞬間、雲の真下付近でぶわりと赤い光が膨らんだ。
　分厚く灰色の雲の下側が赤く染まる。
　夕焼け？　――いや、それよりもずっと明るく、強い赤だ。
　と、まるで駆け上る雷のように、閃光が立ち上る。
　一瞬、画面は真っ白に輝き何も見えなくなった。
　かと思うと、次の瞬間には光は消え、まるで何事もなかったかのように元通りの景色に戻った。

「ＵＦＯでしょうか。それとも隕石でしょうか」

　女性アナウンサーはにこやかにそう締める。彼女にとって、このオカルティックな発光現象がＵＦＯだろうが隕石だろうがそれ以外の何かだろうが、さして大きな問題ではないのだろう。
　きっとすぐに忘れられてしまう。日常に埋もれてゆく。そんなニュースのひとつ。
　それがひとつの旅立ちの証であったことは知られぬままに。

　――いつしか雲は寝子島上空を覆い尽くしていた。
　ぽつり、ぽつり……垂れ込めた黒い雲から、雨粒が零れ落ちはじめる。

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加いただきありがとうございました。
ゲームマスターを務めさせていただきました、笈地行（おいちあん）です。

お話はこのまま「＜鈴島海賊の秘宝II＞赤い寝子島の冒険」へ続きます。
個別あとがきにてにて、今回持ち込んでくださった持ち物の使用状況をお知らせいたします。
次回、もしご参加いただけます際は、今回の持ち物を引き続き持っていることになります。

なお、この秘宝シリーズの中ではまだフツウの寝子島に帰れないみなさんですが、
時空のゆがみ（？）的な関係で
他のシナリオには問題なくご参加いただけますのでご安心くださいませ！

さて、ちょこっとだけネタバレです。
今回のピラミッドの構造ですが、私の未熟な描写力のせいでややこしかったかもしれません。
よく似た構造の建物が実際に存在しておりまして、福島県にある「会津さざえ堂」といいます。
建物の中は螺旋状のスロープになっていて、ぐるぐる上りながらてっぺんまで行き、
またぐるぐる下りながら下りてきます。入り口と出口は別で、上りの道と下りの道は交わりません。
不思議ですね。好きな建物です。

それでは少々冬休みを挟ませていただいて、
第２話にてまたお会いできることを楽しみにしております。
みなさま、どうぞよいお年を！

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