いざ行かん、買い物日和！｜リアクション

いざ行かん、買い物日和！

　とある日曜日、部活もなく、水上桜にとっては完全な休みの日のこと。
　窓から射し込む太陽の光が閉じた瞼越しにも眩しすぎて、桜は目を覚ました。
「うう、眠い……けど、眩しい……」
　しぱしぱとする目で、時計がある方へと眼差しを遣る。
　時計の針は、午前１０時近くを示していた。
「…………」
　時計の針が時を刻む音を耳に、桜は暫しぼうっとしていたが、
「……これ以上、ボーっとしてても始まらないわね」
　と、じきに気合を入れてすっくと起き上がると、さくっと私服に着替えて出掛ける準備を整える。
　そうして桜は、シーサイドタウン駅前へと向かった。
（特に用事はないんだけど……）
　適当に歩いているうちに、きっと眠気も消えるだろうとの考えだ。
　目的もなくのんびりと歩くうちに、桜はキャットロードに辿り着いた。
　立ち止まって、辺りを見回す。
「このあたりなら確か……あ、あった」
　そのつもりでやってきたわけではないが、何度も通っている店だ、間違いない。
（折角だし、寄って行こうかしら）
　そこは、手芸用品やアクセサリーのパーツを扱っている店。
（いいパーツが手ごろな値段で入手できるから、重宝してるのよね）
　なんて思いながら、早速店内へと足を踏み入れる。
　ガラスや水晶でできたビーズ達の宝石のような煌めきが、桜を出迎えた。
　それに、ビーズと言えば、天然石を加工したものや、あたたかな印象のウッドビーズも。
　それ以外の天然素材を使ったパーツも豊富だし、
（チェーンや糸、テグスも……何だか、呼ばれているような気持ちだわ）
　なんて、桜は胸をそわそわとさせた。
　あれもこれもと目移りしきりになるのは致し方なし……なのだが、
（お手頃価格でもそんなにたくさんは買えないのよね……）
　という調子で、学生らしい懐具合が、桜をうんと悩ませる。
　暫し考えた末に、桜は今日はビーズやクリスタルパーツを使ったバレッタの材料に照準を絞ることにした。
「あ、このクリスタル、意外に安いわ」
　必要なパーツをと改めて品定めに取り掛かれば、新たな発見にぱっと声が華やぐ。
　完成品をイメージしながら、買い物かごに一つ一つ、心に留まった品を入れていく桜。
「これで良し……かしら」
　材料費は、手持ちのお金で無事に賄えた。
　加えて、レジ横に並んでいた、センスの良いアクセサリーの本も購入する。
（バレッタ作りの参考になるといいな。もっともっと素敵な物が作れるかも）
　本と、包んでもらった材料達を連れて、桜は弾む心地で店を出た。
　きっと素敵なバレッタが作れると、口元に弧を描き、胸をわくわくとさせながら。
　勿論、目はとうに晴れやかに覚めている。

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