酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
えぇ、まぁ…八千穂とのケンカの原因とも呼べたおばあ様なんだけど…
(思うことがあるように沈黙の後)
若くして亡くなったおじい様の会社を継いで、さらに大きくして。家政婦さんも雇わずお父様をひとり
で育てて、退いた後も影響力のすごい人だった。
恐れに近い尊敬もあったわ。
(教会の窓へ視線をやると)
あの人、遺言書なんて用意してて…
そこには私や八千穂の名前があって、遺産の分配がされる旨が書かれてたの…
全くないわけじゃないけど、結構珍しいケースらしくって。
おばあ様が懇意にしていたっていう弁護士の方が
「お孫さまも大切にされてたんですね」
って言われたとき、八千穂より私が泣けてきちゃって。妹のほうが分かってたらしいの。
「おばあ様にはよくして頂いてます」
あんなの社交辞令じみたものだと思ってたのに。
(顔は笑っているが涙がこぼれ始め)
私が勝手に恐れて、反発したりして、屋敷を出て行ったまま声も聞かせず…
子供だったのは、私ひとり? 馬鹿みたい…
おばあ様は亡くなる前、どんな気持ちだっただろう…