(三人掛けのソファーとテーブルが部屋の中心に置かれ
壁際には座り心地の良さそうな
揺り椅子が一脚置かれている。
併設されたキッチンの奥からは
お菓子の甘い匂いがふわりと漂ってくる)
出来上がり…。
…作り過ぎちゃったかな。
一人より、誰かと一緒にお茶したいな…。
(台所でお菓子作りの準備をしながら
料理、本当に久しぶりだわ。
…作りすぎても、ももや友達、が私にはいるもの。
無駄になんて、ならないわよね。
(台所で作業中。
水羊羹をつくっているようだ。
〜♪
ふふ、瓢君、喜んでくれるといいな…。
この島は優しい人たち、たくさんいるのね。
一緒にいると、とっても楽しくて僕は幸せ。
でも、一人のお家は…やっぱり寂しい…。
姉様、今はどこにいるのかな…。
あ…姉様…。
もう少し一緒に、いたかった、な…。
姉様の、想いがつまった宝物…。
…姉様、大好き…。
(指輪を大切そうに抱きしめ
そっと目を閉じる。
…そう。宝物。
だからあげるわけじゃないわ。
お守りとして、貸してあげるだけ。
その指輪には、姉様の想いがたくさんつまっているの。
だから、無くしてはだめよ。
それを持っている間は、
姉様のことを、忘れないでいてね…。
それじゃあ、またね。もも。
姉様に会いたくなったら
何時でも猫鳴館や地下帝国に来なさいな。
でも、夜は危ないからあんまり出歩いちゃだめよ?
(そういい、ももを抱きしめた後
リビングから出て行く。)
…これを、僕に?
でも、これって姉様の宝物なのじゃ…。
僕が貰ってもいいの…?
ううん、なんでもないのよ。
可愛いもも。少し考え事をしていただけ。
地下帝国に行くのはいいけれど、
危ないことはあまりしちゃだめよ。
それと…。貴女にこれを…。
(キラキラと輝く月を思わせる指輪を取り出す。
どうやら例の事件の月の指輪のレプリカの様だ。)
ただいま…
あれ、姉様!
えへへ、お帰りなさい!
今日も地下帝国のみんなに会いに行ってきたのよ。
…姉様?どうしたの…?
(どこか沈んだ面持ちでソファーに腰掛け
ぼんやりと虚空をみつめている。)
(ぱらりぱらりと植物図鑑をめくり
あるページではたと捲る手を止める。
一瞬の躊躇のあと、植物の写真にそっと手を乗せ
祈るように目を閉じた。)
【ワスレナグサ】
花言葉
「私を忘れないで」「真実の友情」「誠の愛」
【今日のご飯】サーモンのクリームパスタ
(一人分の料理が盛られた皿と
フォークを持って静かにテーブルにつく。
誰もいない向かい側の席を見つめ
酷く悲しげに俯いた。)
…いただきます…。
(消え入りそうな声で呟き、
ただもくもくと目の前のパスタを口に運ぶ。)