ちゃよなら、寝子祭！｜リアクション

ちゃよなら、寝子祭！

【"おままごと"】

　子供の遊びといえば、"おままごと"である。
　まあ、それはともかくとして、

「なんだ、このすがたは！？　こどもっ！？」

　浮舟久雨が自身の身体の変化に気づいたときにはまだ記憶は彼女の頭の中にとどめられていた。
「かみのけ、かみのけは……よかった、あおいままか……」
　まず久雨が心配したのは自身の髪の色のことだった。
　髪の心配を終えると、久雨はあたりを改めて見まわした。
　そこは家庭科室。
　確かここで寝子祭のための講習が行われることになっていたはずだったが――どうしてこうなった？

　と、そのとき、久雨はそこで見慣れた友人二人の姿を発見したのだった。

　　　＊　＊　＊

　みんなのオカンこと吉野夕弥もこのときばかりは紛れもない４歳児の姿になっていた。もっとも彼もそのときはまだ記憶が頭の中にあった。
「え、なんでとつぜんこどもに……？　めがねがずれるなぁ……」
　と、そこに聞き覚えのある声が彼のもとに飛んでくる。
「ゆーや！」
「んん？」
　少し舌の足りてない感じの声で名前を呼ばれて、夕弥は思わず眼鏡がずれたまま声の主の方に振り向いた。
「あ、うきふねさん！　それにかじゅ……じゃなくて、かずらきさんも！」
　夕弥の前に姿を見せたのは、やはり夕弥と同様に『身体が縮んでしまっていた！』な感じの浮舟久雨と、葛城璃人だった。
　久雨は目の覚めるような青い髪、璃人は『男の子だけど女の子にしか見えない！』という、いつも通りの格好であった。繰り返すが、それがいつも通りだった。ザッツ、ネココー、クオリティ。
　さらにそれはさておき、
「ゆーや！　たいへんだ！　りぃがきおくをなくしてしまった！」
「ええ！？　なんだってぇ！」
　夕弥は自分でも驚くぐらいベタなリアクションをした。あるいはこれも幼児化ゆえのことなのかもしれない。
「だいじょうぶ！　ふたりがおともだちなのはおぼえてます！　だからいっしょにあそびましょう！」
　何がどう"だいじょうぶ"なのか、そして何がどう"だから"なのかはわからなかったが、璃人は元気一杯にそう言うので、久雨も夕弥もなんだかきっとだいじょうぶなような気がしてきた。
「よし、じゃあなにしてあそぼうか？」
　夕弥が訊くと璃人は自信満々にこう答えた。

「もちろん"おままごと"なのです！」

　何がもちろんなのかといえば、もちろん子供の遊びといえば"おままごと"だからである。

「おままごと。ごっこあそびだな。りょうかいだ。なら、わたしはちゅーがくせいの"まほうしょうじょ"をやろう」
「おままごと、たのしそうでいいね！　じゃあ、ぼくは"おとうさん"やくがいいなー」
「りぃは、もちろんあくの"まほーしょーじょ"やくなのです！」

　配役はとんとん拍子に決まっていった。
　ちなみに、何がもちろんなのかといえば、もちろん"おままごと"といえば"魔法少女"であるからで――ん？

「それじゃあ、"おままごと"のはじまりなのです！」

　かくして小さな魔法少女（？）達の"おままごと"が幕を開ける。

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