その鐘を鳴らせ　～異空間脱出～｜リアクション

その鐘を鳴らせ　～異空間脱出～

　鐘を狙う７人と、その護衛についた雅也が階段を登ると、アーチとそれを囲む青い影と出くわした。距離はまだあるものの、下手に動くと危ないだろう。
「射程距離的には、十分だ」
　ジュストは身構え鐘を狙う。真央や紫、修も瓦礫を投げようと物陰に隠れてスタンバイ。円は即席ブラックジャック付き縄跳び、白は己のろっこん『薄いは堅い』を使い、硬化したリボンを握り締めた。
　雅也はジュストを守りながら様子を伺う。青い影たちはまだ、彼らに気づかない。ちらり、と辺りを見渡すと……。建物の周りへと青い影が集まっているのが見えた。
（残った皆は、大丈夫なのか？）
　どこかで大きく鈍い音がする。記士郎が、何かを鳴らしているのだろうか。目を凝らすと、刀が階段を登ろうとする青い影を引き付けていた。彼は音で気を引き、間合いを詰めてくるのを見計らって転ばせていた。そこを楓がナイフや瓦礫でとどめを刺す。
　刀の動きは疾風のようで、おそらく彼のろっこん『加速』を使ったであろう事が知人達の目には明らかだった。

　階段の下。次々に来る青い影に、楓は表情を曇らせる。
（最悪、トワが鳴らせばトワだけでも帰る事ができる筈だ）
　トワは無事だろうか？　気になった楓が青い建物を見上げていると、青い影を蹴飛ばして沈黙させつつ轟が問いかける。
「トワって子の事が気になるのか？」
「ああ……」
「行って来い。こっちは俺達でどうにかする」
　刀が背中を軽く叩いて上を指差す。楓は頭を下げて階段を駆け上がった。
　少し離れた所では、記士郎が美咲紀を庇って怪我を負い治療を受けていた。治癒術を使って轟や刀を癒していたがそれが青い影には脅威として映ったのかもしれない。それ故に狙う者が現れたのだ。
　美咲紀が申し訳無さそうにしていると、記士郎は「大丈夫」と首を振った。だが、ちらり、と青い建物を見て思う。
（このままでは、ジリ貧ですね……）
　鐘を鳴らさせまいと、青い影は次々に来る。どうにか刀と轟、楓で押さえているとはいえ、辛いものがある。
「シュー君達、大丈夫かな……」
　美咲紀もまた、祈るような気持ちで青い建物の上を見つめるのだった。

　青い建物の周りに居た影たちが、分散する。それに気を取られる、建物の上の青い影。紫はそこに隙を見つけた。
「今よ！」
　彼女の声にあわせて、揃ったものが投擲を開始する。突如飛んできた瓦礫の破片に青い影達が僅かに震えるも、彼らはゆっくりと紫たちの方へと歩み寄ろうとする。
　そんな敵を払うかのように飛ぶのは、円の武器。即席ブラックジャックが影の頭に当たれば、影はぐらり、と揺れて鐘に当たろうとする。どうにか体勢を整えるそれに、円は「ちぇっ」と内心で思うのだった。
「させるかよっ！」
　雅也がバットを手に殴りかかる。今まで戦ってきた場所よりやや狭く、しかも瓦礫が飛んでいる。声の合間に、ジュストの「BANG！」という声が聞こえる。圧縮された空気が鐘を揺らさんと飛んで行き、壁になろうとする影を打つ。
　影たちは鐘を鳴らされぬよう、アーチの前へと立ちふさがる。だが、雅也はバットで何度も殴りかかる。だが、そのバットを受け止めた影がもろくなっていたそれを爪で折った。
「雅也！」
　ジュストが青い影へと指を向ける。同時に瓦礫が飛んできた。真央である。傍らでは三毛猫のがおーも「シャー！！」と毛を逆立てて威嚇している。
「雅也ちゃん、下がるのだ！　真央ちゃんたちと瓦礫を投げるのだ」
「んー、何か薄いものがあるなら固くして急場凌ぎの武器に出来るけど……」
　真白の声に雅也は悩む。その間にもジュストが空気の銃を放ち、紫が、修が瓦礫を投げていた。ジュストが、むちゃをしないで、という顔で雅也を見つめる。そんな彼を修が呼んだ。
「兵藤、ちょっと協力して欲しい事がある」
「俺に？」
　修が雅也に提案している間、投擲者を庇うように真白と円が前に出た。このまま鐘を狙いにいきたかった真白ではあるが、どうも届きそうも無い。仕方なく硬化したリボンを武器に青い影を殴りつける。

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