星ヶ丘寮で優雅な一日を｜リアクション

星ヶ丘寮で優雅な一日を

☆☆☆　下校後にすること　☆☆☆

　夕方、桜月が学校から車で帰ってきました。
　車で通学する星ヶ丘寮生は珍しくありませんが、月の場合は健康上の必然性がありました。
　月の長い髪は白く、瞳は赤。
　生まれつき色素が非常に薄く日光に弱い月は、日傘なしで日中外出することができないのです。
「……ふう」
　月は体からの疲労を抜くようにため息をつきました。
「おかえりなさいませ。お加減がよくないのですか？」
　迎えたメイドに月は答えます。
「大丈夫。今日は学校で体育があったから疲れた……見学すれば良かったかな」
　少し後悔しつつ部屋着に着替えました。
「今日は疲れたからいつもの散歩には行かずに、寝るまでデザインを描くよ」
　
　先ずは今日描くデザインのテーマを決めよう、と月は考えます。
（思い浮かんだイメージを形にするのもいいんだけど、テーマに沿ったデザインを考えるのもいい訓練になる）
　将来は服飾デザイナーとしてやっていきたい月です。
（こういった訓練は日々積んでいきたい。こうやってデザインを考えるのも楽しいしね）
「もうすぐ文化祭があったな。テーマは確か……うん、踊る時の服を考えようか」
　と自分が踊ろうとした時の服をイメージしてみた月ですが。
　思い浮かんだのは華やかな舞踏会でした。
　スケッチブックに鉛筆を走らせて、少し眉を寄せます。
「パーティーで着るドレスになっちゃった……これだとテーマを踊りにした意味がない」
　文化祭の踊りというのは、こういうのとは違うはずです。

「ただいま～♪」
　椿美咲紀もポニーテールを揺らして学校から帰ってきました。
　家事全般はメイドさんがしてくれますが、花好きな美咲紀は、庭のお花の世話とか、家庭菜園の野菜の世話は自分でしています。
　まずは畑の白菜の具合を見に行きました。
「なかなかいい感じに育っています。スーパーでも買えるけど、自分で育てると美味しさが違う気がするのですよ!」
　愛着で目が眩んでいるのかもしれませんが、偽らざる思いです。何より新鮮ですし、植物は愛情をかけると美味しくなるとも聞きます。
　育てている数は少ないのですが、そろそろ食べごろなひと玉を採ってみました。
「立派な玉に育ちました。虫をつけないように頑張った甲斐があったというものです」
　ずっしりとした重みを手に、美咲紀は満足そうです。
「メイドさんに渡して、明日何か良い感じに料理してもらいましょう。ギョーザの具にしても良いですし、白菜と豚肉のミルフィーユ鍋にしても良いですね。しかしお鍋となるとメイドさん達も一緒に食べないと一人だとつまらないのです……」
　メイドさんたちと楽しく食事する様子を思い浮かべて、笑みがこぼれてくるのでした。