星ヶ丘寮で優雅な一日を｜リアクション

星ヶ丘寮で優雅な一日を

☆☆☆　庭のロボット　☆☆☆

　さて朝食を終えた唱華は、エントランス棟で玄関口の清掃をはじめました。
　ロングの黒髪が和風メイド服によく似合っています。
「おはようございます」
　執事服に身を固め屋外へ向かう進が声をかけてきました。
「おはようございます。あら、お掃除ですか？」
　進は竹箒を手に答えます。
「はい。スタッフの皆様も定期的に掃除をしてくれていますが、今の時期は直ぐに落ち葉が溜まってしまいますね。景観を損ねるほどではありませんが、可能な限り綺麗な状態を保ちたいですから、少し手伝うとしましょうか」
　凝り性なのねえ……、と思いながら唱華は笑顔で見送ります。
「おつかれさまです、いってらっしゃいませ」
「行って参ります」
　唱華に一礼すると、進は外へ出て行き掃除を始めました。

　まもなく生徒たちが姿を見せ始め始ました。
　部活で早く出かける者、のんびり朝の散歩をする者とさまざまです。
「いってらっしゃいませ」
　唱華が笑顔で声をかけていたその時。
「に、庭に、ろ、ロボットが……！」
　動揺した数人の生徒たちが駆けてきました。
　しかし唱華はクールなままです。
　あらあらうふふ、と笑みを浮かべ、あたふたしている一人の生徒のそばに近づきました。
「失礼します。リボンを直させていただきますね」
　一言声をかけ、彼女のリボンを直します。
「ありがとう……あの、庭にロボットが……」
「どういたしまして、お気をつけて。ロボットですか、どなたのご趣味でしょうね？　落ち葉が増えていないか確認して参りましょうか」
　唱華の微笑みに、生徒は落ち着きを取り戻したようです。
「いえ、たいしたことじゃなかったわね……私としたことが取り乱して」
　そう言って出て行く彼女を、唱華はにこやかに見送るのでした。

　その後から、ふらふらとワンレンの大人しそうな美少女がやってきました。
「はぁ……」
　さっきまで約３メートルの黒いロボット”フェノメノン”に変身していた絹織真由良です。
　秘密はそれだけではありません。美少女に見えますが、実は真由良は女装している男子なのでした。
（ろっこんが勝手に発動しやがったせいで朝から筋肉痛だぜ……）
　本来なら意識しないと変身出来ないろっこんなのですが、なぜか無意識に発動してしまったようです。
「まぁ……なっちまったモンはしょうがないよなぁ。おっと、そろそろ学校いくか」
「おはようございます」
「ああ、おはよう……」
　動けないレベルではないので、メイドさんに挨拶をしながらなんとかエントランスに向かう真由良でした。
　
「お待ちしておりました」
　エントランスでは、真由良のメイドが車を用意して先回りしていました。
「ああ、助かった……」
　朝から筋肉痛で歩くのはきついので、正直助かりました。
（それにしても……なんでジープなんだろう……秘境探検か何かみたいだな）
「何か？」
「いや、別に問題無いけど」
　とりあえず真由良はジープの助手席に乗り、学校まで送ってもらうのでした。

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