星ヶ丘寮で優雅な一日を｜リアクション

星ヶ丘寮で優雅な一日を

☆☆☆　自宅にて、優雅な朝　☆☆☆

「今日は休むわ。遅刻確定だし」
　シャワールームから出た三宅葉月は、メイドに告げました。
「よろしいのですか？」
　心配そうなメイドに葉月は、どこか作りものめいた、ミステリアスな可憐さと物憂げでアンニュイな表情を向けました
「単位も出席日数も充分に足りているし、たまには学校休んでも悪くないわよね……」
「かしこまりました」
　メイドが下がると、葉月は髪を乾かし、制服の代わりに、自分でデザインした黒白のゴスロリ服に着替えました。
　手先が器用な葉月は、私服は全て自分でオリジナルの衣装やアクセサリーをデザイン・作成して着ています。
　アンシンメトリーなその衣装は、葉月のミステリアスさをいっそう引き出していました。
　メイドが準備してくれた朝食──オレンジジュース、クロワッサン、ヨーグルトのフルーツ添え、温野菜をのんびりととります。
　食後にアッサムのミルクティ。
　お金に困らない星ヶ丘寮生とはいえ、贅沢な朝食を摂るには時間のゆとりが必要です……心のゆとりと言い換えてもいいかもしれません。

　朝食を終えた葉月はバルコニーへ向かいました。
　ここからは星ヶ丘の街並みと海とを一望できます。葉月はぼんやりと晩秋の風景を見つめました。
　秋晴れの温かい日差し。けれども吹き付ける風には冷たさが少し混じっていて、いよいよ冬が身近に感じられるのでした。
「……風の中に冬が混じり込んでる。秋もそろそろ終わりね」
　葉月の中で何かが閃きました。
　バルコニーからアトリエへ向かいます。
　迷いなく筆を取ると、下絵だけで放置していた絵に水彩絵具で秋と冬のあわいの色彩を彩っていくのでした。