ビブリオバトルッ！～文系異種格闘技戦～｜リアクション

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● 三夜雪月のオススメ『さみしがりやのこねこと一番星』

　次に登壇したのは、長い黒髪を赤いリボンで左右に留めた可愛い少女。
　三夜家の長男の娘で、小学４年生の三夜雪月である。
「ゆづが……私が紹介する本は『さみしがりやのこねこと一番星』だよっ」
　雪月は抱きしめていた絵本を高々と掲げ、観客たちに見えるようにする。
　あらすじはこうだ。

　　小さな島にこねこが一匹いました。
　　とてもさみしがりやのこねこでした。
　　パパやママに会いたいといって泣くこねこをかわいそうにおもったおひさまは、
　　一番星さんに相談しました――

「この本は、作者のしずくのみやさんがはじめて書いた絵本です。私はしずくのみやさんの本が大好きで、他にもいっぱい持っています。たくさんのなかでもこの本が一番好きなのは、病気で苦しくて寝ている時に、よく読んでもらったからです」
「自分で読めるようになったら自分で読むこともありましたが字が読めない時も優しいイラストを見ていると心がいっぱいになりました」
　熱を出しやすい雪月は、床に着くことも多かったのだろう。
　賑やかな三夜家で、ひとり布団で寝ていなければいけない。それは少女には辛いことだったろう。
「ひとりでさみしいと泣くこねこさんの気持ちが病気でひとりで寝ている時にわかった気がしました。でも私には、たくさんの家族がいます。寝込んでいると心配して様子を見に来てくれます。だから、私よりもこねこさんのほうが寂しいのかなと思いました」
　雪月ははじめの方の印象的なページを開くと、身振りも交えて絵本の持つ切なさを表現する。
　こういうステージパフォーマンスはテレビで見たものをアレンジしている。
　将来はアイドルになりたいという雪月である。
　ステージの上では普段より一歩大げさにしないと伝わらないということはわかっている。
「一番星さんと出会ったこねこさんがどうなるのか。
　こねこさんはいつまでも寂しいって泣いているのか。
　結末はぜひ読んで確かめてください」
　雪月は肝心なところは見せずに本を閉じると「最後に、」と続けた。

「この本の作者は私のお姉ちゃんです。
　でも、お姉ちゃんの本だからというのを抜きにしても、私はこの本が大好きです」