ビブリオバトルッ！～文系異種格闘技戦～｜リアクション

ビブリオバトルッ！～文系異種格闘技戦～

● 鷹峰凪のオススメ『怪人ヘヴン』

　シーサイドタウンの一角にある、鷹のマークが目印の「鷹峰書房」の女店長、鷹峰凪。
　二十歳の凪は、本の虫と言っていいほどの本好きである。
　ビブリオバトルも面白いゲームと、これまでの紹介を非常に興味深く見守ってきた彼女のオススメは、寝子島出身の宵宮零（寝子高の書道教師・瓜山メイの兄、レイのペンネームである）が手掛ける異能力系ギャグコメディ漫画だ。
「うちが紹介するのはこの『怪人ヘヴン』シリーズです」
「漫画？」
　と首をかしげるおじさんに、凪はウィンク。
「漫画も立派な『本』だから……文句は言わせないわ」
　もちろん。
　そうだとも。
　漫画とて本である。
　そして、そこには世界が、物語が、紡がれているのだ。
「この漫画は神様に見守られる世界に異変がおき、女神の１人が『神としての力』と『笑顔』を失ってしまった。同時に不思議な力を持つ人間がちらほらと現れるようになった……という設定なの」
　寝子島の、もれいびたちには、身近に感じられる設定である。
　もちろんそのことは承知の上だろう、凪は茶目っ気たっぷりに観客に問いかけた。
「もし異能力が使える様になったら貴方達はどうする？　便利に活用する？　それとも……悪用しちゃうかしら？」
　すこしばかり観客のために考える間をおいて、凪は続けた。
「主人公は……その力を笑えなくなった女神や人々を『笑顔』にする事に使うの」
　彼は『大怪我をしても笑って済むレベルになる』という能力を持っている。
　その能力で、シリアスを笑いに変え、馬鹿騒ぎを引き起こすのだ。
　みんなの笑顔のためならば、無茶したり努力する。それがヘブン。
　女神を――読み手を笑顔にしたい。
　一番根底に流れているその思い、その優しさがなによりグッとくる作品なのだ。
「やってること自体は下らないことが多いけど、『笑顔』にする為の努力など、熱い要素にギャグ具合は老若男女楽しめると思うわ。『笑顔』を求める貴方にお勧めよ」

　というわけで、と凪はどんっと、発売中の『怪人ヘヴン』シリーズをすべて、束にして持ち上げた。
「鷹峰書房では『怪人ヘヴン』シリーズ、全作取り揃えているから気になった人は買ってね。他にも寝子島所縁の本とか置いてるからご贔屓に！」