せんせいといっしょ：瓜山先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：瓜山先生編

（あれ？）
　すっ、と。真面目な……いや、大人びた眼差しで、作品を見る修が、何故か遠くに感じられる。僅かに胸の中を冷たい風が通り抜け物寂しさを覚えるのだ。
（光陰……そのとおりだろう）
　修は、静かに目を細める。
（俺は、一足飛びに上の学校に行きたいくらいなのに、脳が柔軟な時期を義務教育で縛る日本がもどかしい。すべき事したい事がたくさんあるのにな……）
　自然とため息が漏れる。
（将来の事も腹を括らないと。冬休みに結論を出して……）
　父親とも話し合わねば、と知らず、鋭い目つきで考え込む修。ふと、真央の視線で我に帰ると普段の柔らかな表情に戻る。
「修ちゃん真剣で声かけづらかったのだ……」
「あぁ、悪かった。でも、俺も色々考えていてね」
　そう苦笑する修の肩をメイがそっと叩く。そして見ている者を和ませるような、穏やかな笑顔で彼を見た。
「色々と抱えている事、思っている事が多そうですね。ですが、あまり張り詰めすぎてはなりませんよ」
「はい。心得ています」
　修は静かに頷いた。

（書道かぁ、落ち着きがないから、苦手なんだよなぁ。どうやったらうまく書けるんだろう？）
　作品展をチラシで知った桜庭円はドキドキしつつも会場へ。受付に時子を見つけ彼女は早速パンフレットを貰う。
「私も、そろそろ交代します……。刀さんや蓮さんも上がる時間ですし、一緒にどうですか？」
「うんっ」
　御巫時子と話していると、ちょうど森蓮と御剣刀もやって来た。不思議に思っていると、手伝いできている事を刀が教えてくれる。一同は作品をゆっくり見よう、と話していると……見覚えのある少女が会場へ入るのを見た。

（今日は、色々な作品を見て学べたらいいですわね）
　天満七星は日ごろから書道をたしなむ。彼女は日ごろやってしまいがちなミスや癖などを思いながら作品を見ていこう、と作品展へと足を踏み入れた。
「やっほ～。七星ちゃん！」
「天満も来たのか。面白い作品がそろってるぞ」
　円と刀の声がし、笑顔で会釈。時子と蓮も笑顔になり、彼らの仲間の加えてもらう事に。1人でまわるのもいいが、仲間と意見を交わしながら見るのも面白い。
　宇佐見満月やプリティヴィ・プラサード、三宅葉月と作品について意見を交換しながら過ごし、充実した時間を過ごす。
「どれも興味深いですね。……瓜山先生の作品はどれでしょうか……？」
「そろそろ、見えてくるかと思いますよ」
　蓮に案内され歩いて行くと、メイの姿を見つける七星。近くには真央と修の姿もある。
「メイせんせーい！　真央ちゃんも修くんもヤッホー♪」
「ん？　七星ちゃんも来てたのだ！　円ちゃんに蓮ちゃん、刀ちゃん、時子ちゃんもいるのだ。みんなでメイちゃん先生の作品みるのだ～」
　いつもの調子に戻った真央が嬉しそうにそういい、改めて皆でメイの作品を見る。最初に口を開いたのは時子だった。
「あのっ、先生は何故この言葉を選んだのですか？」
「僕も知りたいなぁ。先生はどういう想いでこれを書いたの？」
　円も興味深そうに頷き、メイはゆっくり頷く。
「そうですね。色々と時代が瞬きをしていくうちに過ぎていくような寂しさを覚えたからでしょうか。だからこそ、覚えておきたい事、学びたい事を確かにして置きたいとも思って……」
　自分へ発破をかけたいのもある、と小さく呟いたメイは改めて自分の作品を見て思いを確認しているようにも思えた。
　準備段階から手伝っていた時子だったが、改めてメイの作品を見、息を飲む。普段のメイが持つ雰囲気とも、授業の時のメイとも違う、別の顔を見たような気がするほど、その文字はとても凛々しかった。
　円はその傍らで「『光陰矢のごとし』かぁ……、月日は二度と戻らないから、大切にだっけ？　いい言葉だよね！」とうんうんと頷いている。そうしながらも、こんな事も考えていた。
（僕が書くとしたら何にしよう？　七転八起とか？　結構すてきな気がする）
　ちょっとちがうかな？　とも思いながらも書道へ興味を持ったようだ。一方、七星はというと、静かにメイの作品を見、思わず感嘆の息を漏らしていた。
「普段の先生とは違う、力強さが感じられますわね。あ、……普段の先生が弱いと言っているのではなくて、普段は柔らかいといいますか、穏やかな感じですから」
　七星がそういうと、メイは「そうかもしれません」と静かに頷く。普段の柔和な雰囲気とは違う、凛とした姿もまた彼女なのだと感じつつ七星は言葉を紡ぐ。

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せんせいといっしょ：瓜山先生編

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