- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ある初めての日
小野田 万里は、思い出す。あのとき……あのときに違う選択をしていれば、雨に濡れて帰宅したとき、そっと身体を温めてくれる誰かがいたんだろうか。
自分で言うのもなんだが、中学の頃の万里はかっこいい系美少女で通っていた。人気を順位で表すとすれば、クラスで５番目くらい。
そんなある日のこと、１人の男子生徒に呼び出された。人気の無い場所に、男子に呼び出される。といえば、なんとなくどんな用件か察しがつく。
相手の男子生徒は、万里と同じくらいの人気があり、そこそこイケメンだった。今思えば、十分に美少年だったと思う。その彼が、万里に告白をする。
告白されるなんて初めての経験だった。舞い上がったのはもちろんのこと。けれど、万里の答えはＮＯ。別に好きな子がいたからだ。クラスで１、２位を争うようなイケメン。もちろん、ライバルは多数のだ。
だから万里はこう思った。自分は告白されるほどの魅力的な女の子なんだ、と。
つまり、その気になれば、ライバルたちに負けることなく本命を狙える！ と。
アンタなんて歯牙にもかけてない、そう万里は男子生徒の告白をあしらってしまった。
今、冷静になって思い返せば、馬鹿だったと思わざるをえない。今だったら、万里のほうから告白している。ちなみに本命の男子生徒には、無残な連敗だった。いつしか、どちらも万里と別々の進路に進んで、そのまま疎遠になってしまっている。
そういえば、あのとき告白してきた男子生徒は、今や２児の父だそうだ。万里にフラれたのをバネに頑張って、らしい。それを聞いて尚更、あのときＯＫしていれば……と思ってしまう。
夕立の寂しさを一身に受けて、万里は溜息をついた。
八十八旗 信彦は、思い出す。初めて外国語でナンパをしたときのことだ。
あれは中学３年生の夏だった。初めて信彦は海外でナンパをした。日本語圏外ではあったが、信彦としては『紳士の義務』を実行したのである。美しい女性がいれば、声をかける。それはどこであっても揺るぎない信念だ。
中学で学んだ英語を駆使し、考え抜いた口説き文句。
「Ｉｔ ｉｓ ｗｈａｔ ａ ｂｅａｕｔｉｆｕｌ ｅｙｅｓ．
Ｄｏ ｙｏｕ ｎｏｔ ｍａｋｅ ａ ｔｅａ ｂｒｅａｋ ｔｏｇｅｔｈｅｒ？」
相手の女性の瞳を美しいと褒めてから、お茶に誘ったのだ。
だがしかし、返された言葉は、残念なことに信彦の予想とは違っていた。
「いいえ、結構です。ありがとう」
ただ単に、『ＮＯ』とお断りされるだけなら、まだダメージは少ない。実際はそうではなく、まさかの、とても流暢な日本語だった。そして、信彦は見事に玉砕したのだった。
思えば、わざわざ日本語で返答されたのは、信彦の英語の発音が悪かったからかもしれない。もしくは、かける言葉が拙かったからだろうか。
どちらにせよ、信彦は悶々としてしまった。そしてそれが、心の奥深くに根付く、トラウマになってしまったのだろう。なんとなく語学から距離を置くようになってしまった。
その結果として、今ではすっかり英語が苦手になってしまっているのである。
信彦に落ちた雷は、物理的な痛みではなく、精神的な痛みを残していってしまった。
（日本語でお断りされてしまうほど、英語ができていなかったってことかなー？）
人体に影響はないようだが、信彦の目には涙がきらりと光っていた。
壬生 由貴奈は、思い出す。初めてひとりで料理した日のこと。
（……こっちに越してきてすぐのこと、かなぁ？ アレは）
由貴奈は元々本土出身だ。５年前に両親が他界して、寝子島へやって来た。現在も住んでいる高級マンション『パルラ・フラーマ』へ入居して、引っ越し作業が終わって、料理を作ろうとしたときのことだ。
（あのときは、家事なんて全然できなかったなぁ。いつも父さんと母さんに任せっきりで、何もしてなかった）
由貴奈は、両親が亡くなるまで料理を含め家事をほとんどしたことがなかった。そのため寝子島へ来た最初の日は、夕飯の材料を買ったはいいが、まるで上手くいかなかった。
作ろうとはした。が、もれなく黒焦げになってしまったのだ。
（むせるし、後片付けは大変だしで、もう散々だったねぇ）
結局、夕飯は抜きになってしまった。けれど、ついでにと買っていた材料でクッキーを作ったのだった。クッキーは、一度だけ母親と一緒に作ったことがあった。
（不思議なものだよねぇ、母さんと１回だけ一緒に作っただけなのに）
そのことは不思議とハッキリ覚えていた。そのお陰で、ひとりで作ったクッキーも、とても美味しく作れたのだ。
由貴奈は、すっきりと晴れた空を見上げた。手に提げている買い物袋に入っているのは、夕飯の食材。それからあの日買ったのと同じ、クッキーの材料だ。
（あのときは酷かったなぁ、我ながら。今は、料理は何でも作れるけどねぇ）
自分で言うのもなんだが、中学の頃の万里はかっこいい系美少女で通っていた。人気を順位で表すとすれば、クラスで５番目くらい。
そんなある日のこと、１人の男子生徒に呼び出された。人気の無い場所に、男子に呼び出される。といえば、なんとなくどんな用件か察しがつく。
相手の男子生徒は、万里と同じくらいの人気があり、そこそこイケメンだった。今思えば、十分に美少年だったと思う。その彼が、万里に告白をする。
告白されるなんて初めての経験だった。舞い上がったのはもちろんのこと。けれど、万里の答えはＮＯ。別に好きな子がいたからだ。クラスで１、２位を争うようなイケメン。もちろん、ライバルは多数のだ。
だから万里はこう思った。自分は告白されるほどの魅力的な女の子なんだ、と。
つまり、その気になれば、ライバルたちに負けることなく本命を狙える！ と。
アンタなんて歯牙にもかけてない、そう万里は男子生徒の告白をあしらってしまった。
今、冷静になって思い返せば、馬鹿だったと思わざるをえない。今だったら、万里のほうから告白している。ちなみに本命の男子生徒には、無残な連敗だった。いつしか、どちらも万里と別々の進路に進んで、そのまま疎遠になってしまっている。
そういえば、あのとき告白してきた男子生徒は、今や２児の父だそうだ。万里にフラれたのをバネに頑張って、らしい。それを聞いて尚更、あのときＯＫしていれば……と思ってしまう。
夕立の寂しさを一身に受けて、万里は溜息をついた。
八十八旗 信彦は、思い出す。初めて外国語でナンパをしたときのことだ。
あれは中学３年生の夏だった。初めて信彦は海外でナンパをした。日本語圏外ではあったが、信彦としては『紳士の義務』を実行したのである。美しい女性がいれば、声をかける。それはどこであっても揺るぎない信念だ。
中学で学んだ英語を駆使し、考え抜いた口説き文句。
「Ｉｔ ｉｓ ｗｈａｔ ａ ｂｅａｕｔｉｆｕｌ ｅｙｅｓ．
Ｄｏ ｙｏｕ ｎｏｔ ｍａｋｅ ａ ｔｅａ ｂｒｅａｋ ｔｏｇｅｔｈｅｒ？」
相手の女性の瞳を美しいと褒めてから、お茶に誘ったのだ。
だがしかし、返された言葉は、残念なことに信彦の予想とは違っていた。
「いいえ、結構です。ありがとう」
ただ単に、『ＮＯ』とお断りされるだけなら、まだダメージは少ない。実際はそうではなく、まさかの、とても流暢な日本語だった。そして、信彦は見事に玉砕したのだった。
思えば、わざわざ日本語で返答されたのは、信彦の英語の発音が悪かったからかもしれない。もしくは、かける言葉が拙かったからだろうか。
どちらにせよ、信彦は悶々としてしまった。そしてそれが、心の奥深くに根付く、トラウマになってしまったのだろう。なんとなく語学から距離を置くようになってしまった。
その結果として、今ではすっかり英語が苦手になってしまっているのである。
信彦に落ちた雷は、物理的な痛みではなく、精神的な痛みを残していってしまった。
（日本語でお断りされてしまうほど、英語ができていなかったってことかなー？）
人体に影響はないようだが、信彦の目には涙がきらりと光っていた。
壬生 由貴奈は、思い出す。初めてひとりで料理した日のこと。
（……こっちに越してきてすぐのこと、かなぁ？ アレは）
由貴奈は元々本土出身だ。５年前に両親が他界して、寝子島へやって来た。現在も住んでいる高級マンション『パルラ・フラーマ』へ入居して、引っ越し作業が終わって、料理を作ろうとしたときのことだ。
（あのときは、家事なんて全然できなかったなぁ。いつも父さんと母さんに任せっきりで、何もしてなかった）
由貴奈は、両親が亡くなるまで料理を含め家事をほとんどしたことがなかった。そのため寝子島へ来た最初の日は、夕飯の材料を買ったはいいが、まるで上手くいかなかった。
作ろうとはした。が、もれなく黒焦げになってしまったのだ。
（むせるし、後片付けは大変だしで、もう散々だったねぇ）
結局、夕飯は抜きになってしまった。けれど、ついでにと買っていた材料でクッキーを作ったのだった。クッキーは、一度だけ母親と一緒に作ったことがあった。
（不思議なものだよねぇ、母さんと１回だけ一緒に作っただけなのに）
そのことは不思議とハッキリ覚えていた。そのお陰で、ひとりで作ったクッキーも、とても美味しく作れたのだ。
由貴奈は、すっきりと晴れた空を見上げた。手に提げている買い物袋に入っているのは、夕飯の食材。それからあの日買ったのと同じ、クッキーの材料だ。
（あのときは酷かったなぁ、我ながら。今は、料理は何でも作れるけどねぇ）
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2015年07月22日
- 参加申し込みの期限
-
- 2015年07月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2015年07月29日 11時00分
