＜宝石人形＞紅玉ルヴィア｜リアクション

＜宝石人形＞紅玉ルヴィア

　　【疑わない本心が知りたい】

「それは、違うよ」
　桜庭円の冷静に告げる声に、その場の一同が、一瞬冷酷に断言する声と錯覚する程、状況だけが混乱していた事が分かる事態に、辺りがはっきりとそれを認識して我に返った。

「人形が話せば、普通は戸惑っちゃう。人形は、普通喋らない。動揺し心無い事を言っちゃうかもだよ。本心を知りたいなら、方法を考えないと」

「で、でも…でも……！」
　曖浜瑠樹と黒依アリーセの前に──ルヴィアの正面に立った円にルヴィアは表情を崩し涙があれば今にも泣き出しそうな様子で動揺を隠さず訴え掛ける。
　震えを隠さないルヴィアを桜庭弓弦がそっと抱き止めた。

「ねぇ、ルヴィア。動かないで美奈さんに会ってみない？
　ボク達は美奈さんの思い出話を聞き出す。
　ルヴィアはそれを聞く。
　それなら、美奈さんの本心が聞ける。僕らを信じてみない？」

　弓弦が抱き締める胸の中で、ルヴィアは小さく頷いた。
　そのまま、腕に抱えて、屈んでいた弓弦が立ち上がる。

　それは、望んでいない命懸けのやり取りが終了した事を告げていた。
　誰も、それに口を挟む者はいない。
　今、殆どの存在が疲弊している中で、それ以上に人形の心を満足させられる案は出てこなかった。