ピンク愛らんどの一日｜リアクション

ピンク愛らんどの一日

　１年１組の午後の授業は数学だった。
　大好きな桐島先生の授業に、宮祀智瑜はうきうきしながら授業を受けていた。
「……じゃあ、この問題は宮祀、やってみろ」
「は、はい！」
　指名された智瑜は黒板前に出てきて、問題を解き始めた。
　窓から、そよそよと教室に入り込む風に、先生はぺろりと指先を舐めて風向きを確認。
　それからゆっくりと、智瑜の斜め後ろに移動する先生……。
「？　義弘先生？　何をしてるんですか？」
「……！　な、なんでもない、問題に集中しろ。そこ、使う公式が間違っているぞ！」
「え？　あ、は、はい」
　再び問題に集中しようとするが……、どうも先生の視線が気になる。後ろからじっと見られているような……。
「あの、先生？　やっぱりそこにいられると……きゃっ！？」
　不意に、強く吹き付けた風に、智瑜は慌ててスカートを押さえた。
　——み、見られてないですよね？
　おそるおそる後ろを振り返ると、目をらんらんとさせてこっちを見る男子たちが目に入った。
　そして、先生も食い入るようにスカートを、というか、お尻を見ている……！
「な、何をしてるんですか、さっきから……！？」
「い、いや、これは……！　コラ！　おまえたち！　授業中だぞ、授業に集中しろ！」
　——？　今日の義弘先生、なんだかいつもと違うような……？
　その違和感が明らかになるのは、放課後になってからだった。
　下校しようと廊下を歩いていたら、いきなり男子にスカートを捲られてしまったのだ。
「へっへーん！　ピンク！」
「きゃっ！？　な、なんですか？　も、もうっ、めくっちゃダメです！」
　スカートを押さえてガードするのだが、次から次に男子が、智瑜のパンチラを狙って攻めてくる。
「あ、あの……！　あっ！？」
　今日の智瑜はピンクの紐パン。レースで、よく見ると可愛さの中にセクシーさも窺えるそんなパンツ。
　けれど、紐パンなのが仇となった。スカートを捲られるときに、男子の指が引っかかったのか、紐がほどけてはらり……。
　パンツが落ちそうになったのに気づいて、急いで紐をしめる。
「きゃっ！？　み、見ちゃダメです！」
　紐を結んでいる間は無防備。ぴらっ、ぴらっ、と捲られるたびに、智瑜の白いお尻とピンクのパンツが放課後の校舎に踊る……！
「や、やめてください！　あ、義弘先生！」
　耳まで真っ赤になった智瑜は、桐島先生の姿を見つけて走り出した。
　ところが、先生、ふと足を止めると階段下に陣取り、パンチラ待ちを始めたではないか。
　しきりに階段と自分の角度を綿密に計算しながら、ベストなポジションを探している。
「義弘先生！？」
　ここにきてようやくフツウじゃなくなっていることに気づいた智瑜。
　ろっこん『想い見る』で、先生の求めているものを探ると、頭の中にパンチラの映像が無数に浮かび上がってきた。
　——せ、先生ったら、何を考えて……？
　ますます真っ赤になってしまう……。だが、これではっきりとわかった。
　——おっぱいしか興味がない義弘先生がスカート捲りのことしか頭にないなんて……神魂の影響確定です！
　他の男子も神魂のせいで、パンチラのことで頭がいっぱいになっているのだ、と。
　……でも、神魂の影響とは言え、先生が他の女の子のパンツをじっと見てるのは、恋する乙女にとっては複雑だ。
「先生……、意外とパンツ好き？」
「……ハッ！　み、宮祀！？　いつからそこに！？」
「さっきからずっといます！　階段の下で女子のパンツを見るなんて、やめてください！」
「な、何を言う！　こ、これは学校の風紀を守るために、こうして階段下の見回りをだな……！」
　しかし、相変わらずろっこんで感じる先生の頭の中はパンツでいっぱいだった。
「そ、そんなにパンツが見たいなら、わ、私の……」
　と言いかけて、慌てて頭を振る。
　——ダ、ダメです！　それじゃただの変な子になっちゃいます……！
　どうにか元に戻る方法を見つけないと……と考えを巡らせたそのとき、また一陣の風が廊下を吹き抜けた。
　ひらりと先生の前で捲り上がるスカート、桐島先生の眼鏡にはっきりピンクの紐パンが映るのが見えた。
「！？　み、宮祀、紐パンは健全な高校生にはどうかと思うが！」
「！！！　せ、先生のえっち！　忘れてください！！」

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