【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族｜リアクション

【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族

　箒が飛ぶらしい、という噂は小山内海の元にも届いていた。桜花寮の中庭に出て、箒にまたがってみると―――確かに海の体はふわりと浮き上がった。
（おぉ、これは楽しい）
　最近ちょっといろいろあったけど……今は忘れて、思い切りかっ飛ばして楽しもう。しばらく低空で試してみると、乗り方のコツが分かってきた。練習して自信がついたところで、早速夜空高くに舞い上がって加速する。何もない空中を、どんどん速く。ほほに当たる風が心地よい。海はしばしの間、全てを忘れてスピードの世界にのめり込んだ。
　そういえば、箒が飛ぶ異変だけでなく、島に魔女が現れたとも聞いている。
（レースに自信があるみたいだけど、私だって負けないよ）
　とりあえず、その魔女を上空から探してみよう。海は下を見下ろしながら、少しスピードを落とした。
（いた……！）
　まもなく、空を縦横に高速で飛び回る、それらしい影が見つかった。勝負を挑む前に、海は島を一周するルートの下見をしておくことにした。

「空飛ぶ箒かぁ」
　噂を聞きつけた呉井陽太は、自室の箒を出してみた。噂通り、箒はふわふわ宙に浮き上がり出した。
「よいしょっと」
　箒に体重を預ける陽太。
「バイクの免許はあるけど、箒の免許はないから上手く飛べるか心配だなぁ」
　陽太はのんびりと口に出すが、慎重に乗っていれば心配はなさそうだ。とりあえず、外でちょっと飛ぶ練習をしてみよう。慣れたら、気になる噂を確かめてみたい。フジコ先生……に、似ているという魔女フジコーノを探してみるのだ。

「うーん、どこにいるのかな？」
　飛行に慣れた陽太は、寝子島上空に飛び上がってフジコーノを探し始める。箒がキラキラしていて、衣装もフリル付きの派手なものらしいので、すぐに見つかると思ったが……。
　意外と見つからない。
「まぁ、いいや」
　焦っても余計に見失いそうだし、よく目を凝らして探そう。こうしておっとり構えられるのが彼の良さだ。もし見つかったら、驚かさないよう近づいて話しかけよう。

「おお～、これは楽しいですね！」
　クルジッカ・ヘルマゴルを乗せた箒は、自由気ままに寝子島を飛び回っていた。
「ストレス解消になりますよ、ひゃっほーい！」
　調子に乗って声を上げたが、その拍子にスピードを上げすぎてしまった。木の茂みに突っ込むクルジッカ。
「あいたた……」
　あちこちに身体をぶつけてしまったが、だんだん要領は掴めてきた。熱心に飛び方を練習しているのは、遊んでいるのではなく魔女暴走族に勝負を挑むためだ。
　クルジッカの故郷は、魔女の本場・ドイツ。急に魔女を名乗ったにわか魔女の暴走を止めたいという思いは人一倍強い。
　飛び方を一通り習得したクルジッカは、魔女を探しに高度を上げた。目指すは、総長クマキチーノだ。

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