【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族｜リアクション

【ハロウィン】空飛ぶホウキと魔女暴走族

　箒の異変は、寝子高の校舎でも起きていた。
「ファッ！？箒で飛べるのだ、どこの魔法学院なのだっ！？」
　新聞部室の掃除中に浮き上がった箒に驚く後木真央。
「やれやれ、また神魂か」
　今日も起こった怪異に、八神修は苦笑した。
「これは……NMR（寝子島ミステリーレポート）にピッタリの事件来たコレなのだ、ねこったーチェックなのだ～！」
　言い終わるより先にスマホを取り出し、真央は情報を集める。箒が飛行し始めただけでなく、魔女暴走族が勝手気ままに飛び回っているらしい。彼らに勝って箒を折らないと元には戻らない、とも。
「なんと、ゴンちゃんが魔女？ゴンちゃんを倒せというのだ？ ……む、無理臭いのだ～」
　レディース総長フジコーノの情報に到達するも、早くも諦める真央。毎度フジコ先生をゴンちゃんと呼んでは懲りずに絞められている実績のためだ。
「フジコーノが『負けたわ……』と思えばいいんだろう。愛を伝える者は愛に弱い。つまり、こちらが愛を注げばいいんだ」
　箒に乗っかって飛行のコツをつかみながら、修が言う。
「……修ちゃん？まさか……」
「ああ、フジコーノを口説く。強烈な自己暗示で自分を騙し、真剣にフジコーノを口説いて世界を救う！」
　修の決意を込めた口調に、真央は目を潤ませる。
「修ちゃん、マジでやるのだ？な、涙で前が見えないのだ～」
　涙をぬぐった真央は、今度はきっぱり前を向いた。
「やるなら計略を巡らすのだ！三十六計逃げるにしかず、失敗したら修ちゃんの貞操の危機なのだ！」
「……逃げてどうするんだ」
　真央のセリフに突っ込みを入れる修。
「ゴンちゃんに挑む前に、真央ちゃんで予行演習するのだイメトレなのだ！」
　こうして、新聞部室で愛の予行演習の時間が始まった。誰かに見られていなくて幸運だった。

「……よしよしなのだ～。あ、でもゴンちゃんは修ちゃんより15センチくらい背が高いのだ。真央ちゃんがここに乗って、この状態で抱きつくとゴンちゃんくらいだと思うのだ？」
　踏み台に乗った真央の前で、修は精神を統一する。愛する人の住む世界を守るためなら、俺は死ねる。目の前の人を、愛する人だと思い込むんだ！
「修ちゃん、自己暗示をしっかりかけるのだ！修ちゃんの好きな子がちょっとでっかくなったと思えばいいのだ！」
　無茶振りである。
　それでも、修の覚悟は揺るがなかった。

このページにイラストを設定する