浮かぶ手も借りたい！｜リアクション

浮かぶ手も借りたい！

☆悪戯の果て

「会う連中会う連中にやり倒して寝子島をスクリームで充たしてやるよぃ」
　場所を変えて、ねむると瓢は悪戯を続けていた。
「す、すみません。寝子島駅はどう行けばいいんですかね？」
「ああ、それなら……」
　親切に道案内してくれた人に感謝の握手をするねむる。
「ありがとう助かりまし……」
　その瞬間、腕が取れて血糊が噴出した！
「ぎゃぁぁっ！　腕がッ、僕の腕がぁぁっ」
　真っ青になりへたり込んだ相手を見て、笑いながらまもるはその場から走り去る。
（散々遊んだしこれで締めようかね。オマケをつけてやろう）
　瓢の腹から飛びだした手に悲鳴を上げて逃げ出す男。
　だがその後を、血塗られた手だけが何処までも追いかけて行った。
　男の悲鳴は遠くまで良く響いた。
「ウヒャヒャヒャ、満足だよい。悪戯はやめられないねえ」

「さてあらかたやりきったし、顔を覚えられる前に退散しようか。僕も地下帝国に行くよ」
　ねむるは瓢について猫鳴館地下の掘削現場まで下りて行った。
　そこでは二本の手が発掘作業に励んでいた。
「ウム『両手』ともしっかり働いたね……アルェ？」　
　ほめた瓢は、自分の片手を見下ろし腑に落ちない表情になった。
「浮かぶ手で地下帝国の掘削か、さすが瓢君……て、なんか手の数おかしくない？」
「え、ここに二本手があるということは、あの手誰んだ……？　ねむるはん、いつの間に」
　涼しいはずの地下で、血糊まみれの瓢の頬を汗がつたっていった。
「あれ、僕の手でもないんですけど」
　絶句したねむるの歯の根が合わなくなる。
　作業していた一本の手が、二人の意志とは無関係に、ふうっと浮かび上がり、二人の眼前に近づいてきた……
「「うひゃああああっ！！」」

　地上にて。
「因果応報だな。まだまだ修行が足りん」
　ホルスは、手から見える二人の恐怖の表情に満足の笑みを浮かべていた。
「さて、このくらいにして帰るとするか」
　片手を戻すと、ホルスはその場を去っていった。

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