浮かぶ手も借りたい！｜リアクション

浮かぶ手も借りたい！

☆ハロウィンの悪ふざけ

「へぇ、こりゃ面白い。体と分離させた手が思い通りに動くよ」
　日暮ねむるは、手を分離させてしばし考え、悪友に電話することにした。
（どうやらフツウに悪影響は今のところなさそうだし、たまには彼と悪ふざけってのも悪くないかな？）
「ふぁあっと、もしもし瓢君？　僕だけど今暇してる？」

　そんなわけで呼び出された骨削瓢は、片腕だった。
「あれ、どうしたのその手？」
「片手はちょいと地下帝国で穴掘りさせてるよい」
「なるほどー、まあ着物に隠しておけばわからないよね。ところで……」
「この異変を利用して遊んでみようってわけだよい？　それなら……」
　二人は楽しそうに悪巧みを始めた。

　打ち合わせとちょっとした準備を済ませると、二人は適度に人通りがあり、横道から逃げられる場所で計画を実行した。
　まず、ねむるが分離した手を道へ這わせる。
　まるで奇怪な蜘蛛のように。
「えっ、あれって……」
　通行人が気づいたタイミングで、瓢が何も気づいていないように這う手の近くへ。
　突然、瓢の顔に手が張り付く！
「ぐええええええ！」
　卵を産んでいるようにグロテスクにビクビク脈打つ手。某エイリアン映画のような演技賞ものだった。
「ひぃい～化物に友達がやられた！？　誰か助けてっ」
　あまりのことに、そこかしこで悲鳴が上がる。
　ねむるは暴れる瓢の体を押さえつける振りをして近づいた。
　そのとき、瓢の腹から血糊付きの腕が飛び出した！
　返り血糊が顔にかかり、血まみれになった顔で、ねむるは絶叫をあげた。
「ぎゃぁぁぁ～～～！！」
　周囲の人たちは腰を抜かさんばかりにビビって我先にと逃げていく。
「ははっ、こりゃ面白いね。瓢君」
　ニヤリと顔を見合わせた二人は、警察を呼ばれたりする前にその場を去った。

　そんな彼らの悪戯を、離れたところで見ている者がいた。
「うわー、なんかあくどいいたずらしてんな」
　その一人は、三谷賢二。といっても、この場にいるのは飛ばした手だけなのだが。
（あーあ、女の子たちパニックしてるじゃん。なぐさめに行こうかな）
　浮かばせた手で街のあちこちを見ているところだった。
　そしてもう一人は。
「みんなが皆俺と同じことをできてるだと？　こいつはまさか俺のろっこんが暴走しちまったのか？」　
　元プロボクサーのホルス・フォモナンデスである。
「さぁーてどうしたものか。こうなった原因がわからないわけだ。まぁこういう問題は時間が解決するだろうから特に気にすることもない……」
　弟子であるねむるの悪戯を眺めながら、ホルスは苦い顔になる。　
「しっかしあんまりいい気分じゃねぇな。こいつは俺のオンリーワンで奥の手でもある」
（っけ、だがどうやら他の連中は腕だけが転移するみたいだな。それに引き替え俺は自身の体や範囲内にある'ナニカ'であれば……こんな感じに自由に移動させれる）
　ホルスは、足もとにあった空き缶を少し離れた場所に転移させる。
　それは、浮かんでいた賢二の手に当たった。
　気にも留めずに空き缶を元の場所に戻すホルス。
「ちなみに別な場所に転移させた状態の腕の半径1ｍそこにあるものも動かせるが……それが見えてなかったり触れれてなければ無理だけどな」
　そう言うとホルスはその場を立ち去った。
「せっかく息を止めずに腕を転移できるんだ。少し遊ぶか」

　空き缶が手に当たった瞬間、大学にいた賢二のろっこん『It's just a joke!』が発動した。
　このろっこんは『ろっこんによる攻撃を受ける』ことによって発動するが、意思のある攻撃以外、衝突であっても反応してしまう。
　ボンッ！
「うわっ！？」　
　賢二の自慢のストーレートヘアは、爆発音と煙とともに一瞬でマンガのようなアフロになってしまった。
「だからなんでいつもこうなるの……」
　爆発に驚いた人たちの注目を浴びながら、煙に咳き込みつつ、急いで手を戻してトイレに駆け込む賢二だった。

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