もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～｜リアクション

もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～

「逃げるけど、いっそ喰われたほうが、早く元に戻れるか……」自分の考えを、イヤイヤダメダメッ！　と首を振って否定する武道。
　五月や優芽と出会う、少し前のことである。

　葡萄の化身となった彼。
　お祭りごとは、徹底的にハジケて楽しむ派だ。
　それに、気になることもある。
　先ほどはバトルの真っ最中だったが、何も戦いを望むばかりじゃないだろう。
　現に武道、自分の身体の変化を、冷静に観察している。

（食べられても問題ないのか……となると、ちょっと気になるよな）

　秋の陽を浴びて、まるで夜のように煌めく葡萄の粒。

（大きさ的に、大味なのか……美味なのか）

　他の果物たちも、なかなかオイシソウなものばかりであった。
　ということは……。

　ハッ！　と武道は顔を上げる。「まさか、俺のブドウも狙う奴が！」

「志波先輩……？」物陰から現れたのは、花厳望春。
　何度か顔を見かけたこともある。親しい友人が、慕っている先輩だとも聞いた。

　お互いに襲い掛かろうという意思のないことを確認し、二人は状況を整理していく。

　望春の緻密な観察眼と、冷静な批評に、武道は唸る。
　女性的で、ともすれば柔和と思われがちな物腰。
　なんだかんだで苦労性、巻き込まれたら嫌と言えない性格は、どことなく自分と似ていた。

　一方望春も、武道の真摯さに、つい身を入れて話し込む。
　ユーモアに富んだ性格の、その裏に隠された翳の深い部分を、それとなく感じ取る。
　あとで檸檬くんに、いろいろ聞いてみるのもいいかもしれない。

「で、チナミに、望春君の果物はナニカナ？　隠したいなら、別にいいが……」
　そんなことないですよ、と言いながら望春は指先を見せる。

「まあ、ちょっとした奇跡、ってやつです」
「ウーン……『柑橘系』と、コレのコンボは、ちょっと気になるな……」