もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～｜リアクション

もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～

　そんな彼女とは対照的に、まったくこの状況を愉しんでいない者もいた。
　樹の上でガタガタ震えるのは日暮ねむる。

「ちょっとテオ、お～い！」

　彼の視界に飛び込んできたのは、ちょうど捕まって空音に抑え込まれた雅人。
　彼らが互いに食い合いをしている。
　その光景は、ねむるに否応なく、ある光景を呼び覚まさせた。

　ＬＥＤランプのような、赤い月。
　そして、同じく電光ダイオードのような、朱色に煌めく両の瞳。
　彼らはかつて人間であって、そして今は人間ではなかった。
　人たる存在を嘲笑するかのように、彼らは跳躍し、同朋を食らう。
　かつて遭遇した時、腹を噛まれた痛みと冷たさは、深窓意識にも膿傷をつくったのだ。

　理屈はわかっているが、体が言うことを効かない。
　恐怖が骨の髄まで沁みついて、硬直してしまっている。

　ジェットコースターを、心から楽しめる人間もいれば、受け付けない人間もいる。
　

「いったい、なにがあったんすか！」
　樹上の彼、その真下から声が響いてきた。