もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～｜リアクション

もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～

　檸檬が見たのは、ひくひくと全身を震わせているリンゴ、碧南、それに謡。
　それぞれ、体がちょっとずつ齧られている。
　完膚無き敗北であった。

　檸檬にしてみれば、憎きリンゴが二体転がっている。ラッキーである。
　だが、それ以上に彼を襲ったのは違和感であった。

「う、うう……」だーっと涙をあふれされるリンゴ。
　平和を愛するとはいえ、決して一方的に嬲られるような彼ではない。

「くっ……危なかった……」唇を噛みしめる謡。「梨じゃなかったら、死んでた……」

「梨？」檸檬は謡を見る。

　梨がどこかにいるのか？

（注：謡は気づいていませんが、彼は青リンゴです）

「梨か……」檸檬は唇を噛む。標的はリンゴと蜜柑だが、それ以外にも手ごわいのがいるのか。
「梨は、手ごわいんですか……」
「いやー、六月一日宮君」そう、面と向かってほめられると、照れてしまう。「梨いいよー、梨」
「なっ……センパイ！」檸檬が声を上げる。

　青リンゴの彼が、ここまで梨に洗脳されるなんて！
　ということは――梨が使うのは、精神操作系の技か！

　その時、傍らから現れるのは美咲紀。

「椿……梨か」
　檸檬の問いに、嫣然と美咲紀は頷く。「果物の女王、ラ・フランスですです！」
「精神操作系――だな」
「何ッ！」カッと目を見開く美咲紀。「なぜ……それを」
　不敵に笑う檸檬。
　途中の推理は全然違っていたが、奇跡的に答えはあっていた。
　衝撃の展開である。

　気を取り直して、笑う美咲紀。
　精神操作系は、予測可能・回避不可能。
　女王の誘惑に、堪えられるのか！

　突き出された右の掌に、翆緑の光がともる。
　檸檬はステッキを突き出し、抵抗の構え。
　
　謡は額に指を添える。
　我ながら恐ろしい、梨の秘儀。
　だが、梨に同じ技は、二度通用しない！

　－－洋梨の甘い香りで、相手をめろめろにしちゃうのですっ！

「ラ・フランス・テンプテーション……」
「秘技！　梨ってなんかカッコいい名前の品種多いよねビーム！」