中学生も中間テストざます！｜リアクション

中学生も中間テストざます！

○二日目、英語

　二日目の休み時間。
「あーめんどくせえ。テストって途中で抜けられねえから嫌いなんだよ」
　新江天懸は、机に脚を投げ出してぼんやりとしていました。１学期は殆ど学校に通っていなかったが、さすがにこのままだと卒業できないと担任から言われていました。
（あーもうすぐテスト終わる。はー拘束されるのってマジめんどくせー）
　その担任の名前さえ、ろくに憶えていません。クラスメイトもそうですが。
（こないだだって自分で進路相談もせずに、校長に任せやがって……）
「その恰好は何ザマス！」
　突然廊下から顔を出した杉村小春校長に、天懸はひっくり返りそうになりました。
「げっ杉村！」
「またピアスしてるざますね」
　校長は眼鏡をキラリと光らせます。　
「あーうるせーなテストにはちゃんと出てるからいいだろ。勉強するのに夢中でピアス外すの忘れてきたんだよ」
「テストが終わったらどうするざますか？」
　ピアスを外すのか、という意味で尋ねたであろうその言葉に、天懸は一瞬考えてこう答えました。
「テスト終わったら？　あーそうだな、いい点数が取れますようにって本土の神社にでもお参りしてくるわ」
「……本土まで行かなくても、寝子島にも神社はあるざます」
「近くじゃ夜遊びできねーし」
　夜遊び再開宣言を嫌味っぽく言って、校長をからかう天懸でした。

　キーンコーンカーンコーン。
　チャイムが鳴り、皆が席に戻ります。

　１年２組では、時高クレオが意気込んでいます。
（英語は母さんのおかげでペラペラだし、得意科目。絶対満点とってみせるわ！）
　クレオの母はアメリカ人なのです。
　大きな目がかわいいクレオですが、父親似の外見でハーフであることをあまり信じてもらえません。　

　１年１組ではテスト用紙が配られています。
（最後のテストは英語……わたしの一番苦手な教科）
　ストレートの髪をリボンで巻いた、鉄時尾は思い返しました。
（まだ授業に付いて行けないほどではないけど、日に日に難易度が上がっていくのを実感して、テストが近づくにつれ不安ばかりが募っていた……けど）
　前日、時尾は図書室で悩んでいました。
　そこに、青い目の少女が声をかけてくれたのです。

　１年３組の教室で、櫻木梓音は良い姿勢でささっと答案を埋めていました。
　外人のお客様と接する機会の多い梓音にとって、中学1年生の英語は簡単すぎました。
（そういえば、偶然図書室で英語を教える事になったあの子。頑張ってるかしら？）
　その子は、英語の教科書とノートを広げてとても困っている様子でした。
（人見知りで、普段は自分から知らない人に声をかけたりなんてできないのだけれど……）
　あまりに困った様子なので、梓音は思い切って声をかけたのでした。
「何かお手伝いできることはある？」
　時尾も内気で人見知りだったらしく、驚いた様子でしたが。
「……あの、わからないところがあるんです」
　小さな声で答え、質問してくれました。
「……ああ、これはね……」
　そのときのことを思い返しながら梓音は心配になります。
（私の教え方、まずくなかったかしら……？　おせっかいって思われていなければいいのだけれど）
　自分から小学校からの持ち上がりの友達以外に声をかけたのは初めてです。
（もっと仲良く慣れたら嬉しいけれど……）

　時尾は、回答を埋めながら気づきます。
（あ、これ昨日教えてもらったのと同じよね……櫻木さんに教えてもらったおかげで上手く乗り切れそう）
　色々と教えてもらったおかげで、あまり悩むことなく問題を解くことができました。

　２組では、意外にもクレオが首をひねっていました。
（ううん……？？　えーっと、この綴りなんだったかな？）
　しばらく考えましたが、どうしてもスペルが出てきません。
　一問だけでなく、そういう問題が何か所かありました。
（答えはわかるのに綴りが思い出せない……ぐぬぬ……こういうの悔しいわ）
　チラっと時計を見たクレオは焦りました。
（……ってうわわ！　もう残り時間あまりないじゃない！！　他の問題も急いで解いちゃわなきゃ）
　