中学生も中間テストざます！｜リアクション

中学生も中間テストざます！

○テスト終了　　

「終了だ。鉛筆を置いて」
　担任の山谷誠一郎先生の言葉に、クレオは頭を抱えました。
「終わった……。終わってしまった……」
　結局英語のテストは綴りがわからなくて書けない問題がいくつかありました。
（悔しいわね。英語以外の教科もそこそこって感じだったし。クールな女性になるにはもっと勉強しなきゃよね）
　先生の話も上の空で聞きながら、クレオは思います。
（そうと決まれば早速家に帰って復習をしよう！）
　――と、言えたらいいのでしょうが。
「テストのためにしばらく勉強漬けだったわけだし今日くらいはパーッと遊びたいなあ～」
　伸びをしながらそう言うクレオに、隣の席の女の子も言いました。
「だよね～。いろいろ忘れたいよー」
　どうやら彼女もあまり満足いく出来ではなかったようです。
「それじゃ、一緒に遊びに行こうよ！　勉強はまた明日から再開すればいいんだよ！」
　クレオは元気に声をかけました。
　クールな女性にはまだまだ遠いようです。

　時尾は、３組の教室に向かいました。
　ちょうど梓音が出てきたところでした。
「あ、櫻木さん、よかった」
「あ、昨日の……」
　時尾が、嬉しそうに頭を下げます。
「テスト、思ったよりもいい点数が取れそうです。櫻木さんのおかげです、本当にありがとうございました」
「そう、良かったわ」
　梓音はホッと胸を撫で下ろしました。
「櫻木さん発音もいいし、あんな英文をすらすらと……」
「英語が得意なのはハーフだから……親の知り合いの外国のお客様と接する機会が多いのよ」
　そう話す梓音に、時尾は得心がいったようで、憧れの眼差しを向けました。
「櫻木さんお綺麗ですものね……！　日常的に外国の方とお話されているなんてすごいです！」
　かわいい感じの時尾に対し、梓音には大人びた美しさがありました。
「大したことはないわ、兄達のほうがもっと上手なの」
「それに素敵なお兄様方がいらっしゃるんですね……お二人ですか？」　
「一番上のにいさまは父の会社を手伝っていて、外国語もたくさん喋れますの。二番目のにいさまはイケメンなのですけれど……ちょっと残念なんですわ」
　やや遠い目になった梓音の表情も美しく、時尾は見惚れてしまいそうになります。
「家族仲が良いみたいで羨ましいです。わたしにも兄がいるんです」
「どんなお兄様なの？」
「今はお仕事で寝子島に来ていて、そこにわたしが転がり込む形で二人で暮らしているんです。兄さんは仕事一筋といった感じで……寡黙であまり自分の心を語らない人です」
　いろいろと一人で背負いこんでいるような兄が、もっと話してくれたらいいのに、と時尾は心配しています。
「でもさりげなく周囲を気遣ってくれて、とても優しいんですよ」
（寡黙で優しい……うちのにいさまたちとは違うタイプみたいね）
　梓音は興味を感じた。
「素敵なお兄様なのね、一度お会いしてみたいですわ」
「そうですね、いつか紹介できると嬉しいです」
　そして時尾は、思い切って言いました。
「よかったら今度遊びに来てください。今回のお礼もしたいですし」　
「えっ……あ、遊びに……？　いいの？」
「迷惑でなければですけど……お礼と言っても気持ちばかりですし」
「す、すごく……嬉しいわ」　
（お家に遊びに行くなんて、友達っぽい展開……）
　急な展開に少し戸惑いながらも嬉しくて、梓音は柔らかく微笑みました。

　廊下に出たクレオは、ゆる巻きの髪の青い目の梓音に目を奪われました。
（綺麗な人……ハーフなのかなあ。私だってママに似てれば……）
　イケメンと美人にめっぽう弱いクレオです。
「クレオ、行くよー？」
「あ、うん、今行くわ」
　友達に呼ばれ、盛り上がっている時尾と梓音を名残惜しげに見ながら下駄箱に向かいます。
（今度会ったら話しかけよう！）
　ひそかに思うのでした。　

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