中学生も中間テストざます！｜リアクション

中学生も中間テストざます！

○下駄箱で

　呉井弦月は、帰る支度をして下駄箱へ向かいました。
（テストが終わったし、早速ヴァイオリンの練習に行きたいな。テスト期間中はなかなか練習出来なかったし……今日はいっぱいヴァイオリンを弾きたい）
「あれ……？」
　自分の下駄箱へ行く途中、３年生の下駄箱の所に、見覚えのある顔を見つけました。
「あそこにいるのは……昨日会った先輩、かな？」
　テストが終わって一段落つきほっとしていた貴家衿花は、昨日辞書を取ってくれた少年と目が合い、気まずそうに目線をそらしました。
「こんにちは、ええと……」
　話しかけた弦月ですが、まだ名前を聞いていなかったことに気づきます。
「そういえば、名乗るの忘れていたわね」
「そういえばそうでしたね。失礼しました、簡単にですが自己紹介をしますね。２年１組の呉井弦月です」
「３年１組、貴家衿花よ」
　大人と過ごすことが多かった衿花にとっては、同年代の子は子供っぽく感じられてしまいます。
　年下とわかり、衿花はちょっと偉そうに胸を張りました。
（テストの話……しようにも、学年が別じゃ関係ないわよね）
　衿花は、ふと弦月の手元のヴァイオリンケースに気づきました。
「ふぅんヴァイオリン、弾くのね」
「はい。テストが終わったので、これからヴァイオリンの練習をしにクラシック同好会に行こうと思ってるんです」
　ヴァイオリンの練習を毎日欠かさない弦月は、ヴァイオリンをとても大事にしていて、名前をつけているくらいです。
「ふぅん。ちょっと聴いてみたいわね。学校で聞ける機会あるのかしら？」
　弦月は、衿花が関心を示してくれたことが嬉しくなりました。
「まだまだ未熟ですけれど、今度よかったら先輩の好きな曲を弾きますね」　
「そう。楽しみにしてるから、今度お願いね」
　去っていく衿花を見送り、自分の下駄箱に向かう弦月でした。
　
（全教科平均で95点前後ってとこかしら。ま、こんなものよね）
　篠原翠響は２年４組の下駄箱でそんなことを思っていました。
　最後の英語、社会もほぼ余裕で終わり、これなら先生にも実力を見せつけることができるでしょう。
　久しぶりに新体操の練習もできるとあって上機嫌です。
　翠響は、たまたま下駄箱にいた瀧原樹に声をかけました。
「樹はテストどうだったの？」
　どこか近寄りがたい雰囲気を出している樹ですが、物怖じしない翠響は声をかけました。
「んー、そこそこかな……数学がちょっと難しかったけど、そんな酷いコトにはならないと思う」
「そうよね、数学、ひねくれた問題だったわよね」
　手こずった悔しさを思い出し、翠響が同意します。
「あー疲れた、あんまり早く終わってもやることがないなぁ、適当に買物でも行こうかな」
「あたしはこれから新体操の練習。先生に目をつけられないようにね」
　明るく言って翠響は去りました。
　翠響が向かうのは寝子島スポーツセンター。久しぶりの練習も軽やかにこなすことでしょう。
「うん、気をつけるね」
　頷いて見送った樹に、隣のクラスの下駄箱から声が聞こえてきました。
「勉強？　してないですよ。そんな一夜漬けとか猛勉強とか、全くしてないです」
　猫屋敷姫はクラスメイトと話していました。
　樹は聞くともなしに耳を傾けていました。
（そうだよね、勉強なんていつもやってるし）
　同感だと思う樹です。
　姫にしてみれば、普段通りの勉強＋αなので全く変わってないという意味なのですが、相手の子は感心していました。
「やっぱり塾とか行ってるの？」
　姫は、相変わらずのオーバーアクションで「まさか！」と肩をすくめてポーズを取ります。
「塾とか行かないですし、猫第一ですので」
（猫第一？）
　変わってるな、と思い、樹は下駄箱を出る際に隣をちょっと覗きました。
　ツインテールの小柄でかわいい女の子が、猫のようないたずらっぽい目でこちらに視線を向けてきました。

このページにイラストを設定する