中学生も中間テストざます！｜リアクション

中学生も中間テストざます！

○一日目終了、図書室にて

　一日目のテストが終わり、３年生の貴家衿花は図書室で英語の辞書を探していました。　
（国語・数学・理科に関しては授業をしっかり聞いていれば特に問題はないわ。けれど、二日目の英語だけは……どうしても苦手なのよ、外国語）
　眼鏡で隠している青い瞳が悔しさに燃えています。
（でも成績がこれだけダントツで低いのがすごく納得いかない……！）
　だから図書室で教科書に出てくる文章や小テストの問題をもう一度自力でといて……と思っていました。
（これさえ無事に終われば私は大丈夫。だから集中して勉強に取り組まなきゃ）
　しかし。
「何よ！　単語の意味がわからないじゃない！」
　あいにく英語辞書は家に持ち帰っています。
「……図書室のを借りるしかないわね」
　そして辞書を見つけた衿花ですが。それは、153cmの身長には少しだけ高い位置にありました。
（微妙に届きそうで届かない位置とか、若干むかつくじゃない……踏台とか面倒だし背伸び……）
　手を伸ばした衿花のポニーテールが揺れました。届きそうなのに、指先はやっと本に触れるくらいです。
（しても、ちょっと取り出しにくいとか本当苛つくわね）
　その時、誰かが近づいてくる気配がしました。
　振り返ると、金髪を一つ結びにした少年が、まさに衿花が取ろうとした辞書に手を伸ばしていました……

　２年生の呉井弦月も、テスト勉強をしに図書室に来ていました。
（あれ、あの子……届かないのかな？　困ってるみたいだな）
　ポニーテールの少女が、書棚の前で背伸びしている様子を見つけた弦月は、手伝おうと思いました。
（辞書はそれなりに重いから、落っことしたりしたら危ないしな。よし、驚かさないように気をつけながら側に行って……）
「ええっと、これ……かな？　はい、どうぞ」
　弦月は辞書を背伸びして取って、衿花に手渡しました。
「なによ」
「……え？」
　喜ぶかと思った少女のツンとした反応に戸惑う弦月。
「踏台をもってきたら届く高さだったんだから、余計なお世話よ」
「え？　踏み台？　そ……そうですね。届かない時は、そういう物を利用出来るという事を失念してました」
（余計なことしちゃったかな……）
　良かれと思ってやったことだけど、余計なお世話だったかもしれない、と弦月は反省します。
（あ……またやっちゃったわね。せっかく取ってくれたのに）
　衿花には、話しかけられると素っ気なかったり、つんとした態度をとってしまう悪い癖があります。
　直したいと思ってはいるけれど、なかなか上手くいかないのです。自分で言っておきながら、衿花は気まずくなりました。
「……でも、とってくれてありがとう。……ちょっときつい言い方しちゃったわね」　
　衿花の固かった表情は和らぎ、戸惑いの色が見えました。
「いえ、こちらこそ、そちらに声を掛けてから行うべきでした。今度から気をつけますね」
（迷惑じゃなかったんだ）
　心からほっとして弦月は続けました。
「その辞書、うちにもあるんですけれど使いやすいのでオススメです。お互い、テスト頑張りましょうね」
「そ、そう……ええ、頑張りましょう」
　なるべく柔らかく聞こえるよう、返事をする衿花でした。
　