中学生も中間テストざます！｜リアクション

中学生も中間テストざます！

○テスト前日

　中間テストの前日。

　３年生の新江天懸は、普段より早く旧市街の親戚の家に帰ってきました。
　都会の某私立中学で暴力や不純異性交友などトラブルを起こし、半ば強制的に親戚の家に放り込まれた天懸は、１学期は殆ど学校に通っていませんでした。
　部屋に入った天懸はカバンから教科書とノートを取り出すと、適当に読みふけり始めました。
　普段安っぽく甘ったるい言葉を女子に囁いている、大人っぽくチンピラ的な外見からは想像できないでしょう。
　ノートは意外にも綺麗にまとめられています。
　気合いを入れるでもなくだらだらとそれを読み返しながら、天懸は思います。
（ぶっちゃけ俺テスト用に勉強とかしねーんだよなあ……自慢じゃねーけど暗記が必要な場所以外は、なんつーか教科書読んどけばわかるっつーか……やっぱそういう頭のアレは親父似なんだろうなあ）
　天懸の父は植物学者で、父方は学者を多く排出する名門一家なのです。
　少し考え込んでしまって、天懸は椅子から立ち上がりました。
「あーやっぱうぜえうぜえ！」
　ぼすん。
　思わずベッドに身を投げ出して。
「大きな音を立てないで」
　隣の部屋にいた親戚から注意されてしまいました。
　はあ、とため息ひとつつき、声を殺して伸びをする天懸でした。

「補習だけは避ける！　一夜漬け、がんばるぜ！」
　２年生の岩木拓磨はやる気に満ちて机に向かいました。
　いつもこうではなく……晩御飯がハンバーグだったおかげです。
　体育以外全教科が苦手な拓磨に、なんとかテスト勉強を頑張ってほしいお母さんが大好物を作ってくれたのです。
「赤点取って補習になると部活が出来ないからな」
　拓磨が考えているのは野球のことだけです。
　だから勉強しようにも、問題の中身など全然頭に入ってこないのですが……
　今回の拓磨には作戦がありました。
「ケン　エンジョイド　テニス……、ここは、baseballだ！」
　野球に関する事だけは得意な拓磨。勉強も野球に関連付けて覚えようというのです。
　問題文の言葉を野球用語に置き換えてノートに書き出してみます。
「よし次は、『彼女は昨日ピアノをひきました』これは、『野球をしました』で！」
　機嫌よく英訳を続ける拓磨です。baseballとplayだけはスペルはばっちりです。
　とはいえ……うまくいく教科ばかりではありません。
　数学の教科書を開くと、数式は見ただけでクラクラしてきました。
「野球したいなぁ」
　日頃、机に向かって勉強する事があまり無いので、なんとなく体を動かしたくなってきます。
「駄目だ駄目だ。今は勉強に集中しないと」
　テストが終われば野球が出来る！　と自分に必死に言い聞かせるのでした。

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