水曜日の教室｜リアクション

水曜日の教室

　学生の本分は勉強である。一日の中で大切なのは、何よりも授業の時間である。
　そうは言っても、多くの高校生にとって本当に大切なのは、まったくその反対だ。
　授業の前、授業の合間、そして全ての授業が終わった後が彼らの生活を彩り、彼らの今後の人生に知らず知らずのうちに影響するだろう。
　そしてまた今日も、全ての授業が終わった。
　
　キーンコーンカーンコーン。

　１年１０組の青物といきはガタッと立ち上がった。
「うにゃー！　部活だあー！」
　陸上部のといきは素早く人と人の隙間をかきわけ、ザザーッと廊下へ。
　カバンを軽々と持って、ダッシュ。
　ところが、スピードに乗り始めたところで急ブレーキ。
　どこからともなく「といき！」と声がかかった。
「にゃ？」
　辺りをきょろきょろ。
　７組の教室から友だちの女子生徒がひょっこり顔を出す。
「といき～」
「明美？」
　あけみと呼ばれた生徒は、同じ陸上部員だ。
「ないよ～」
「え……なにがにゃ？」
「なにがって、部活～」
「え、今日お休みにゃ？　そういえば、そうだったかもー！」
　廊下であっち向いたりこっち向いたりして、最後には天井を見上げて叫ぶといき。
「あ、すみませんにゃ……」
　歩いてる他の生徒にぶつかる始末だった。
「いや、こっちもよそ見してましたしー」
　彼女もまた、きょろきょろしていた。寝子高生はみな落ち着きがないのかもしれない。
　それはそうと、明美はといきの手をとるとにっこり微笑んで、教室に引き入れる。
「あんた邪魔～」
「（天井を見上げたまま連行され）ああ～うっかりしたにゃあ……」
「ほんと部活バカね～。放課後はのんびり過ごそうよ～」
　といきは７組の教室でだべってる女子の輪の中に吸い込まれていった……。
「といきー。あのさー。数学教えてくんない？」
　だべり女子軍団の中には、やる気もないのに宿題をやろうとしてる者がいた。
「なんでといきにゃー？」
「いやいや、まじわかんなくてー」
「と、得意じゃないにゃ……」
「だよね、あんた数字は４２．１９５までしか知らないもんねー」
「し、失礼しちゃうにゃー。数学、といきが教えてあげるにゃー！」
　といって設問を見て固まるといきはひとまず置いといて――
　今度は、廊下でといきにぶつかった女子生徒の様子をのぞいてみよう。

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