【中間テスト】そんなこんなの最終日｜リアクション

【中間テスト】そんなこんなの最終日

「ようやく終わったわ」
　碧南は両腕を広げて椅子から立った。笑顔がテストの出来を表していた。
「昨晩の努力のおかげよね。それと」
　声には出さずに心で雄弁と語る。
　乙女ゲームの知識がテストに役立つなんて最高よね。古文や地理なんか、勉強しなくてもわかったわ。もう、なんて素敵な乙女ゲームなの、これってなんのフラグなのよ。
「新作を買って思い切り遊びなさい、っていう神の啓示かもしれないわ。でも、その前に運動不足を解消しないとね」
　上機嫌の碧南の横を切羽詰まった顔の女子が走り抜けた。ドアに手を掛けた直後に友人が声を掛けた。
「バイトにしても急ぎ過ぎだって」
「急なヘルプで場所が遠いから！」
　早口で怒鳴るように言って教室を飛び出していった。
　目の当たりにした碧南は、バイトか、と少し俯いて言った。鞄を引っ掴むと大股で歩いて教室を出た。

　着替えを済ませた碧南は体育館でバスケットボールに汗を流す。動きの切れを確かめるかのようにドリブルに緩急を付けた。
「ちょっと身体が重いかな」
　相手を想定した様々なピボットを繰り返す。競り合いを頭に入れてフリースローライン内から何本もシュートを放つ。
　少し息が荒くなってきた。碧南はドリブルでスリーポイントの位置に移動した。息を整える間に教室の出来事が頭に浮かぶ。
　同じくして担任と話し合った進路のことを思い返していた。
「スポーツ推薦で大学進学ね……」
　ぼんやりとした自身に、集中集中、と声を掛けた。その場でドリブルをしてシュートの体勢に入った。額の辺りに掲げたボールを跳び上がると同時に手で押し出した。
　綺麗な放物線を描いてボールは真っ直ぐに飛んでいった。