【中間テスト】そんなこんなの最終日｜リアクション

【中間テスト】そんなこんなの最終日

　橘明里は悩んでいた。ほぼ全ての問題に対して頭を抱える。切ない表情で天井を見上げては頭部を激しく震わせた。左右に付いた羽を駆使して全力で飛び立とうと試みているように見える。
「あかりは真っ白なの。わからにゃい」
　弱音を吐きながらも現実に戻ってきた。項垂れた姿で問題に挑む。
「よ、葉緑体に含まれる色素は、あれなの、きっとそうなの」
　言いながら上体が左右に揺れる。わかったなの、と勢いよく顔を上げた。思い付いた答えを口にしながら解答欄に書き込んでいく。
「くろろふぉるむ、なの」
　耳にした女子が顔を上げた。頭を左右に振ったが明里は気付かない。笑顔で次の問題に目を向ける。
「さ、細胞壁の主成分は、あれなの、美味しそうな名前なの」
　口元を手の甲で拭って、せるかるび、と言って書き込んだ。別の女子が、ロース、と口の動きで伝えようとしたが試みは失敗に終わった。
　明里は書き込んだ答えを眺めた。その表情に不安が染み出していく。
　なんか合ってるような気がするのに、なんか違う気がするの！　書いた答えがだんだんあやしく見えてくるの！
「そうなの、見ちゃダメなの」
　薄目の状態になって明里は解答欄に踊るような文字を書き入れた。はしゃぎ過ぎた幾つかが欄を食み出した。気にしないで最後まで押し通す。
　鉛筆を勢いよく机に置いて、出来たのー、と喜びを露わにした。解答用紙に目をやると、瞬く間に不安が噴出した。
「いっぱい書いたのに、いっぱい不安なの」
　座った状態で手足をばたばたとさせた。机に突っ伏して電池が切れた玩具のように動かなくなった。心の中で存分に愚痴を吐く。
　テストなんか、なくなればいいの！　ビッグパンになっちゃえばいいの！
「……なんか美味しそうなの」
　耳にしたクラスメイトは一様に首を傾げた。