【中間テスト】そんなこんなの最終日｜リアクション

【中間テスト】そんなこんなの最終日

　がらんとした寒々しい部屋に朝鳥さゆるが一人でいた。机に突っ伏すようにして穏やかな寝息を立てている。開いたままのノートは肘に押しやられ、少し皺が寄っていた。
　朝を迎えて眠りが浅くなる。さゆるは低く唸るような声を出した。上体が一瞬、大きく震えて瞼が開く。
「……あたしは――」
　状況を見て、ああ、と納得したような声を出した。気怠そうに立ち上がると重い足取りでバスルームへと向かった。
　脱衣場で無造作に服を脱ぎ捨てる。一糸纏わぬ姿で浴場へと入っていった。
　さゆるは立った状態で頭からシャワーを浴びた。項垂れて首筋を中心に掛ける。その状態で薄っすらと瞼を開いた。下腹部に赤い染みのようなものが見て取れる。指で擦ったが汚れのように落ちることはなかった。
「行きずりの男のキスマークね」
　気にすることなく、シャワーを浴びて適当に頭と身体を洗った。

　部屋に戻ったさゆるは手早く着替えを済ませた。向かい合った姿見には長身の大人びた女性が制服姿で映っている。
「さゆる、今時の女子高生らしく笑いなさいよ」
　姿見の自分に言い放つ。凍り付いた表情に笑みはない。さゆるは素っ気ない態度で離れた。その足で机上の教材を鞄に収めて部屋を突っ切る。
　ドアを開けた直後、改めて後ろを振り返る。部屋の状態を記憶するかのように熱心に眺めた。
「次に帰るのは何時になるのだろう」
　希薄な感情は仄暗い部屋の中に溶けていった。
　部屋を出たさゆるは玄関に直行した。靴を履くと誰もいない家に向けて、行ってきます、と声を掛けた。