沈黙の恋人たち｜リアクション

沈黙の恋人たち

　大盛り上がりのうちに、紙芝居は終わった。
　片づけが始まり、子供たちが親に連れられて帰り……。
　オレンジ色の光の中で、二人の少女が、先ほどの余韻を楽しむかのように、じっと座っていた。

　ひよどりが、瑞麗を見る。
「ひよどりは、尾花ひよどりと言うです」
「るいりは劉瑞麗。寝子小の二年生」なんだか照れくさいような気持ちで、おたがい自己紹介を交す。「上海からきた」
「旧市街に住んでるです」
「ひよどりは、旧市街の子？」瞬時、ためらったあと、瑞麗はそっと言葉を滑らす。「るいりに読み書き教えてほしい」
「るいり、日本語の読み書きするです？」ひよどりが胸を張る。「合点です。任せろです！」
　どんと胸を叩くと、あははっと瑞麗が笑う。
「ひよどりも、るいりの国のことば、教えてほしいです。好きなご本のお話もしたいです」
「お互いの好きな本の話、いっぱいしたい」
「るいりと……仲良くなりたいです」
　ひよどりに答えるかわりに、瑞麗はひよどりの小さな手を取る。
　そしておかしそうに、二人で笑った。

　夕日に包まれ、旧市街に帰る二つの影。その手は固く握られている。手のあたたかさはかきっと勇気。

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