餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

「どけぇ！」
　およそ、寛容とも懐の広さとも無縁な声を上げる、三夜朝陽。
「おらぁ！」叫んで全身を闘気に燃え上がらせると、漆黒の竜巻が、周囲の参加者を吹き飛ばす。
　問答無用の、衆人監視下のろっこん発動。
　――女子力（物理）、見せてやるよ！
　三夜のろっこんは、極端な物理特化。
　アドレナリンがドライブし、筋力上昇、痛覚鈍磨、その分思考は落ちるが、何、もう落ちるところまで落ちている！
「その体に隠し持ってる餃子を、全部寄越しな！」
　
　濛々と上がる土煙の中、立つ三夜。その口は、餃子を咥えている。
「うめぇ……！」不敵な笑みを浮かべる。「唐揚げも最高だけど、やっぱり餃子は最高だぜ」
　――化け物、という誰かの声も、三夜には賞賛として響く。
　
　再びの餃子投擲。
　――女子力（物理）！
　叫んで跳躍する三夜。
　だが、それを超える影。
　
　もう一人の朝陽、志田朝陽。
『ひと』である彼の傍では、フツウが掟。
　三夜のろっこんが減殺され、高度が思ったようにでない。

（サッカーのリフティングの要領だろ？）
　鮮やかに空中で体を翻す。
　とにかく質より量。食っても食っても足りない。なにしろ、さっきまで一切食べていなかったのだ。
　
　参加者たちは気づく。
　徐々に餃子が高級化している。
　頃はよしと見た瓢、取り皿に高級餃子を選んで回収、レッドカードを食らって退場する。
　
（名は欲しいが、実はもっと欲しいんだよぃ）