餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

「すごい……」
「とんでもないな……」

　大食い会場のありさまを見て、観客たちは毒気を抜かれる。

　先ほどまで餃子を食べ、フライングキャッチで餃子を食べていたはずなのに。
　その勢いはとどまらず、むしろさらに激しさを増したようだった。
　
　パーパに出場を禁止されて残念がっていたロシィも、底なしの一同をみてびっくりする。
　
　ライスと味噌汁、漬物とがっつりワンプレートを用意するのは瓢。
　日ごろの空腹が、彼に無限の食欲を呼び起こさせる。
「水で喉を潤すな！　何のための肉汁じゃい！」
　ただひたすら食いまくる、そのさま、食卓をバトルフィールドに変えるがごとし。
　ここは戦場じゃあない、食卓さァ……。
「ただひと月の食事を、今日この日に集約しているだけだよぃ！」
　化け物の理屈を、さも一般に通じるように言わないでほしいが、ともあれ猫鳴館の凄みは伝わった。
　
「頑張ってくださーい！」優芽の声援を受けて、快調に飛ばすのは三夜。
　あれだけ破壊力抜群のアクションをかまし、なお好感度を保っていられるのは、彼女の人柄によるものだろう。
　志田、陽毬の仲間たちと連携し、ハイペースで皿を重ねる。
　
「調味料が必要なら、言ってください」綾花が会場を駆ける。
　異様なまでの熱気に、彼女も煽られたのか。
「私も、全力でお手伝いいたします！」

　まるで花束を投げるように、華麗にウーロン茶のペットボトルを抛る露草。
　軽やかにキャッチし、刀は右手で餃子を食べつつ、左でグラスにウーロン茶を注ぐ。
　フライングキャッチに勝利するため、どうしても量をこなさなければならなかった。
　そのため、大食いのバトルには不利が予想された。
　
　その前にも結構食っていたことは、あまり触れないでほしい。

　刀の取った手段は一つ。
（苦しいと感じる前に、胃に詰められるだけ詰めるんだ！）
　美食にふけるローマの貴族、あるいは稽古後のおすもうさん。
　執念で、胃にねじ込む。

（俺がッ……
　餃子のッ……
　……闘将だ！）