餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

「よし！　できたアル！」
　顔を上げて、畑中華菜子は汗を拭った。
　ボウルの中の山、と盛られた餃子のアンを見て、笑顔を浮かべる。
　
　ひき肉、白菜だけのシンプルなものだが、下味はしっかり付けられ、いくらでも食べられる。
　シンプルな料理の方が結局飽きは来ないし、なにより今日は量が重視される。
　
　まな板の上の白菜が、陽の光を浴びてきらめく。
　包丁で払い、水にさらす。
　
　さて、ここからが本番だ。
　台車に餃子の餡と、タッパーに詰めた餃子の皮を載せ、華菜子は顔を上げる。
　
　――いざ、旧市街へ。
　
　今や巨大な胃袋と化した旧市街へ。
　
　旧市街の名店『猫島軒』の娘、料理の知識は広範。
　四千年の歴史を持つ中国料理。
　調理に数日、食べるのに数日かけるようなものもあれば、トウモロコシを半日煮込んだだけのような素朴なものもある。
　歴史の重みが、彼女の武器だ。
　彼女自身が、ラーメンしか作れなかったとして、それが何の問題があろうか。
　
　一息吐き出し、彼女は眦を決する。
　今日の旧市街は何やら異様。
　何かが起こりそうな予感がビンビンする。

　――でも、大丈夫。

「私のラーメンと餃子に、不可能はないアル！」

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