餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

　湯をくぐった餃子が、艶やかにきらめいた。
　ぷっくり膨れた三つの餃子、それらの上に熱いスープがかけられる。
　箸で一口サイズに裂くと、じわりと肉汁がしみだしてきた。
　口に運ぶと、歯に当たっただけで崩れて、芳醇な香りを残して滑り降りていく。
　熱い。
　単に温度が高い、というのではない。
　肉からイノシン酸が染み出て、香草とまじりあう。
　遥か昔、砂漠を越えるラクダの男が、日暮れに焚火で肉を焙り、山ほど香草を振りかけて頬張った。
　この餃子は、その直系の血統であった。
「モノを食らう」ことを思い出させてくれる。
　
　さっと茹でられたのち、焔であぶられた焼き餃子。
　齧った食感が、水餃子とはまた違う。
　羽の部分にスープがしみわたる。そうして肉も火が通され、充実した弾力があった。
　
　家庭料理として親しまれる餃子。
　家で食べる餃子も、じつに旨い。
　だがこうして、屋外で食べる餃子は、また格別の味わいがあった。
　秋ではあるが、じっとりした低気圧が舌を伸ばし、妙な湿っぽさがあった。
　肌寒さと、蒸し暑さが同居する気候。
　鈍重になりがちな膚の感覚が、ぐっと高まるのを感じる。

『猫島軒・餃子出張販売店』は、大賑わいだった。