餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

『うさぎ屋』出張所。　

　満月のヘラが舞い、油の煙を上げて餃子が焼き目を見せた。
　思わずそちらに目を遣る一同。
　さっと切れ目を走らせると、中から純白の身が覗けた。
　満月特製、魚介餃子。
　馴染みの魚屋、魚新より海老と魚のすり身を取り寄せてもらう。
　取れたてのそれらを、さっくりと混ぜ合わせて蒲鉾状に。
「これなら、新しい材料を仕入れなくても、大丈夫だろうよ」

　一流の料理人は、朝、その日の海の状態を見ただけで、作るべき料理、ブイヤベースの色合いや香りが浮かび上がるという。
　少なくとも満月の料理は、今この寝子島でしか味わえない料理だった。
　料理人、芸術家としての鋭敏な本能のなせる業だ。

　我先にと、刀と瓢は餃子をつまむ。
　溢れる海鮮のスープと、食感。
　餃子の合間に、お好み焼きが飛ぶように売れる。
「豚玉・海鮮・餅チーズコーン、具が全部入った満月焼きもあるさね！」
　すさまじい仕事量ながら、満月は少しも疲れを知らない。

　ソースが飛び交い、マヨネーズがビームとなる。
　一際カオスなこの一角。
　
　その傍らで、お好み焼きをじっと見るのは骨削瓢。
　謎めいた不敵な道化師、何を思う。