餃子の闘将｜リアクション

餃子の闘将

「ようやくやって来ました寝子島ぁ！」
　美しい島の風景を目の当たりにして、本居陽毬は思わず叫んだ。
　
　爽やかな潮風が、彼女のソバージュを靡かせる。
　それほど強くない午後の陽射しが、彼女の瞳を輝かせる。
　やはり、自分はこの島に来るべきだったのだ。
　とある理由で、最近この島に越してきた彼女。
　慣れないことも多いが、それでもこんな風景に出会うと、本当に来てよかったと思えるのだ。
　
「で、どの店から行ってみるよ？」傍らの水守流が声を掛けてくる。
　くせっ毛で眠たそうな様子の男の子である。
　彼らは今日、共闘関係にあった。
　
　限られた予算とお腹の具合でいろんな餃子を食べたい陽毬。
　寝子島の餃子の味を思う存分楽しみたい！

　食欲は旺盛だが、一人で食べるのには限界がある。
　誰か誘ってシェアして食べれば、沢山の種類が楽しめる。
　色々な餃子を楽しみたいという流。

　そんなこんなの、なんとなくの連れ合いであった。

　あちこちで餃子の屋台が出され、濛々と煙が湧く。
　島の人々が、餃子を食べながら談笑している。
　温かで、やわらかな雰囲気だった。
　清潔で、美観が保たれているのもいい。
　ますます、この島が好きになる陽毬である。
「今日の俺は餃子の気分だ……色んな餃子を食べて楽しみたいところだぜ」流がニヤリと笑う。
「よろしくね！」改めて声を掛ける陽毬。
「俺は、そうだな……」手元のスマホが、一軒の店を表示する。「この店から行ってみたいぜ」

『猫島軒』

「こんにちわーっ！」元気いっぱい声を掛ける陽毬。
　慌てて飛び出してくるのは綾花。クラスメイトの流の姿を見て、声を掛ける。
　挨拶しつつ、陽毬を紹介する綾花。
　――ひょっとして、１－４の転校生！？
　ぴんとくる、聡い綾花。すでに転校生の情報は、ねこったーやＮＹＡＩＮで出回っている。
　初めましてっ！　と挨拶する陽毬。聞きしに勝る、元気な女の子みたいだ。
　千客来来！　と声を掛ける華菜子。彼女も１－４。思わぬところで顔合わせとなった。

　優芽、ロシイ、刀の席に合席させてもらって、まずは餃子を堪能しようとする。

（餃子の闘将……）

　その時、背後からそんな声が聞こえた。